齋藤美奈子/女性の道具化【東京新聞2013/05/15】


「米軍の司令官に、もっと風俗を活用してほしいと言った」「慰安婦制度は必要だった」


橋下徹大阪市長の一連の発言は暴言なんてレベルじゃない。言葉の性暴力とお呼びしたい。


「軍人の性的欲求がゼロになるわけがない。何らかの解消策を真正面から考えないといけない」[*1]


このような発想は、彼の頭の中が戦前戦中の軍人や政治家と大差ないことを物語っている。


1945年8月18日(玉音放送のわずか3日後だ)、日本政府は全国に通牒を発令し占領軍兵士向けの「特殊慰安施設協会(RAA)」を設立した。性の相手をする女性は「事務職員募集」などの名目で集められた。戦中の慰安婦募集も同じ手口だったのではと思わせる。


GHQが拒否したことでRAAは翌年廃止されたが、今回の橋下&米司令官のやりとりを彷彿させるものがある。


もっとも与党自民党の閣僚の口から「慰安婦制度は女性の人権に対する侵害だ」などの発言が出るのもちゃんちゃらおかしい。つい最近まで河野談話の見直しに躍起だったのはどの党か。


おりしも政府の「少子化危機突破タスクフォース」とやらが早めの妊娠出産を推奨する「女性手帳」の導入を企てて総スカンにあったばかり。女は「性の道具」か「産む道具」。時代錯誤すぎてヘソが茶を沸かしそうだよ。


【出典: 東京新聞2013/05/15(27面)本音のコラム】