美しい国は強くなきゃいかぬです

衆議院議録 http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/nf_kaigi_l.htm に10/24文部科学委員会議録が掲載されたので,検定関係を抜粋. ついでに安全保障委員会,教育再生に関する特別委員会,沖縄及び北方問題に関する特別委員会も読んでみよう. 中山成彬議員の演説(教育再生に関する特別委員会 2007/04/20)は必読.*1


==目次(衆議院議録へのリンク集)==



教育再生に関する特別委員会 第2号 2007/04/20
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/017816620070420002.htm

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中山(成彬)委員 ぜひ国語の時間を充実させてほしいなと. 何といっても一番,原点だと思うんですね. 先ほど言いましたように,フランスはさすがに母国語を大事にしているなと. 百六十三時間,飛び抜けていますよね. このことは大事なことだと思っています.


基礎学力もそうですが,私はここで,日本の歴史教育について触れないわけにはいきません.


今,安倍総理もいろいろと,本当に宸襟を悩ませているんじゃないかと,こう思うわけでございますが,今,アメリカの下院におきまして,日本のいわゆる従軍慰安婦の非難決議案が出ていまして,安倍総理に謝罪を求めているわけでございます.


この案文を読んでみますと,本当にひどいことが書いてあるんですよ. 日本の兵隊たちが若い女性を性的奴隷化した,そして集団的暴行,強制中絶,性的暴力を加えた二十世紀最大の人身売買である,だから総理大臣に,謝罪しろ,こういうことになっていまして,日本の国民の皆さん方は余りお知りになっていないかもしれないけれども,まさにそれがあるいは採択されるかもしれないという話になっているわけでございまして,とんでもないことだ,私はこのように思うわけです.


そもそも,このいわゆる従軍慰安婦の問題,私たちは,余り口にしない,そういった気持ちがあるんですよ,お互いに思いやって. だけれども,国際社会において日本がそういうふうな非難を受けているということであれば,きょうはテレビも入っていますし,国民の皆さん方にもぜひ理解していただきたい,このように思うわけでございます.


そもそも,この従軍慰安婦という言葉が,もともとなかったんですけれども,初めて出てまいりましたのは,一九八三年に吉田清治という人が,自分は済州島において慰安婦狩りをした,強制連行した,こういう本を書かれたんですね. それで,ある新聞が大々的なキャンペーンをいたしました. そして,それがひとり歩きしたんですけれども. 不審に思った韓国の女性の,これは記者でございますけれども,済州島に行って実際調査したら,そういう事実はなかったということがはっきりしたわけです. それで,後には,この吉田清治さんという方も,実はあれはうそだったということを告白されたわけですけれども,これがひとり歩きをしている. これはまさに国際的な大きな問題になっているということを私たちは知らなければいけない.


そしてまた,日本の弁護士が韓国に行きまして,だれか従軍慰安婦の訴訟をしませんか,こういう募集をしたんですね. ですから,この問題というのは,日本人がまいた種なんですよ,はっきり言って,日本人がまいた種.


そして,私は日本の外交にも問題があったと思いますけれども,歴代その場しのぎの対応をしてきた,そのことが,今安倍総理の本当に胸を痛めていることなんじゃないか,このように実は考えるわけでございます.


はっきりここで申し上げた方がいいと思いますけれども,私は三つのことを申し上げたいんですね.


一つは,今は私たちは考えられませんが,当時は公娼制度というのがございました. いわゆる売春というのが,これは商行為として認められていたわけですね. そのことを私たちはまず知らなきゃいけません.


二つ目は,この慰安婦と言われる方々,ほとんどは日本人だったんですね. 日本の女性だったということ.


私は,浅田次郎さんという作家,大好きなんでいつも読んでいますけれども,一番最近の,買いました本,これは「月島慕情」という本でございますが,最初にこういう文章がございます.


    明治二十六年の巳年の生まれだからミノと名付けられた. ふるさとの村には同い齢のミノが何人もいたが,一回り上にも大勢いたはずの同じ名前の娘たちは,ミノが物心ついたときにはみな姿を消していた. ひとつ齢上のタツも,ふたつ齢上のウノの場合もそれは同様だから,世代を超えた同じ名の娘はいなかった.

    雪がとけるころ何人もの人買いがやってきて,小学校をおえた娘たちを連れてゆくのだった.

    行先のほとんどは上州か諏訪の製糸工場だったが,とりわけ器量の良い娘は東京へと買われた. そういう娘は値がちがうから,果報だと噂された.


こういうふうな文章があります.


私の郷土宮崎,ゴルフのダンロップオープンが開かれるシーガイアというところがございます. 佐藤棟良さんという方がつくられたんですけれども,残念ながら,バブルの崩壊で外資の手に渡りました. 四十近い,自分が手塩に育てたそういう会社も全部売られてしまった.


その方から,この前,手紙が来ました. 八十八歳になった,元気だ,しかし,自分が一生懸命やったあの施設がまだまだ赤字らしい,何とかみんなの力で観光宮崎を少しアピールしてほしい,そういうふうな思いでございまして,創業者として大変つらい思いをされたと思うんです. 自分の育てた企業が買われてしまった.


その文章の一番最後に,こういう言葉がありました. 私は,小学校のときに同級生の女の子が売られていったことを忘れることはできない. 多分,私は,佐藤さんの好きな女の子だったんじゃないかなと. このことを八十八歳にもなってまだ思い出している. そういう時代だったということを私たちは知らなきゃいかぬと思うんです.


三つ目に申し上げたいのは,これは総理もしょっちゅう言っていられます,悲惨な境遇の女性たち,同情を禁じ得ないし,本当に大変だったんだろうと思うと. そのとおりでございまして,この言ったところにも書いてあります. 苦界に身を沈めてなかなか逃れられないたくさんの方がいらっしゃったことも事実でございます.


しかし一方で,そうでないところというのもあるわけでございまして,これはまさにアメリカの資料にあるわけですけれども,第二次世界大戦中,日本が占領したところを次々にアメリカが取り返していきました,奪い返していった. ビルマの戦線でアメリカの情報部が調べた記録が残っている.


それによりますと,慰安婦の一カ月売り上げが千五百円,これを経営者と慰安婦で半々,五分五分で取っていた. だから,七百五十円,慰安婦の手取りだったと. 当時,日本の一般の兵隊さんたちの給料というのは七円五十銭,軍曹が三十円だったそうでございます. 七円五十銭と七百五十円,百倍の違いがあるわけですね. 私たちの給料が今三十万とすると,三千万ですよ. やはり,こういうもうかる商売であったということも実は事実でございます.


先ほど,日本の弁護士が韓国に行って,従軍慰安婦の訴訟をだれかしませんかと言って,手を挙げた方がいらっしゃいます. その女性の方は,実はもう一つの訴訟も起こしていました. これは何かというと,戦後,預金封鎖された,これを返してくれ,そういう訴訟でございました. その金額は,何と二万六千円でございます. 二万六千円,当時の貨幣価値からいいますと,千円あると豪邸が建ったそうであります. だから,二万六千円というのはいかに大きな金額であったか. こういう事実もあるわけでございまして,そういったことも日本人としてしっかり知っておかないと,私は何を申し上げたいかというと,安倍内閣は,美しい国と言われます. この日本に住む私たちも本当に美しい日本人になりたい. 学力も規範意識も大事です,しかし,気概を持たなきゃいけない,気力を持たなきゃいかぬ. そういう意味で,日本人同士,信義を大切にし,何といっても先祖を敬うことも私は大事だと思うわけでございます.


本当に,大変な思いをされた女性の方々の尊厳を大事にすることも大事ですけれども,日本人の尊厳,特に,前の大戦で命を落とされたたくさんの兵士の方々,あるいは広島,長崎,さらに大空襲で命を落とされたたくさんの日本人,あるいは満州で百五十万の日本の方々が悲惨な体験をされた,そういったことについてもやはり思いをいたして,私たちは国づくりをしなきゃいかぬ. そういう意味で,ちょっと時間をとりましたが,申し上げたところでございました.


そこで,伊吹文科大臣に質問いたしたいんですけれども,ことしは高校二年生の教科書の検定がございました. その中で,歴史教科書の中に,まだまだ従軍慰安婦とか強制連行という言葉が残っているんです. 安倍総理,我々はずっと,この言葉を何とかなくしたい,なかったことが教科書にあるんだから,なくそうという運動をしてきて,幸い,中学校の歴史教科書からこの文言は消えました. しかし,高校にはまだ残っている. 私は担当課に聞きました,どうして残っているのと. いや,小中学校と高校は違うんですと. 何が違うのか. 小中学校の教科書は無償だけれども,高校の教科書は有償だから,余り文科省としては強く言えないんだと. 私はあきれました.


検定制度というのはそういうものですか. 有償,無償で違うんですか. お答えいただきたいと思います.



○伊吹国務大臣 文部科学省のどの者がそういう表現をしたのか,私は,そういうことは私の部下は言っていないと思いますけれども. 少なくとも,日本という国は議院内閣制で動いているわけですから,今,自民党,公明党が政権を担っております. しかし,民主党さんが政権をとられる場合もあるでしょうし,共産党さんが日本の政権をとるという可能性も否定できないわけで,おのおのの政党のイズムでもって教科書を云々するということは,私は適当なことじゃないと思っております. したがって,先生御承知のように,教科用図書検定審議会という,客観的な判断をしていただく,学問的,中立的判断をしていただくところの判断を,家永判決においてもそうですけれども,文部科学大臣は尊重をするというか,その意見によって検定の合格を判定する. したがって,今回のことについても,安倍総理も私も,検定について一言の言葉を挟んだこともありません. 政権が変われば教科書の内容が変わるほど日本は怖い国であってはならないと私は思っております.


ただ,大切なことは,一方的な思想によって教科書の事実がゆがめられているということだけは正さなければいけませんから,書かれている内容について両論あるという場合は,両論を必ず併記してもらわなければならない,あるいは,一方的な記述はやめてもらわねばならない. そのことだけは,これから白紙の状態で学んでいく子供には,しっかりと中立的立場で教科書というものを客観事実に沿ってつくり上げていくということだと思います.


いろいろ政治家の,特に最近の歴史を見る目は,政治家も日本国民も一人一人違うと私は思いますので,おのおののイズムによって批判をしたり,逆に,おのおののイズムによって検定結果を逆の意味でまた批判するということも,私はあってはならない. ですから,家永裁判においても,どのように判決は行われているかというと,学術的,教育的,専門的判断であるとされ,文部科学大臣は合否の決定は同審議会の答申に基づいて行われるものと. 私はこれを忠実に理解し,実行してまいりましたので,両方の立場から批判を受けるというのは,私は,私の職責からいえば当然のことだと思っております.



○中山(成)委員 戦後六十年たちまして,今まで封印されていたいろいろな記録等がだんだん出てきているんですね. それに基づきまして,いわゆる歴史研究家,その方々の研究も進んでおります. 私は,そういう意味では,歴史的な事実,これを客観的に勉強してほしい,検定に当たられる方々が. 私は伊吹大臣の立場はよく理解できます. ですから,文科省の職員も,そういう検定に当たられる方々も,本当に,そういう意味で,新しいいろいろな研究家の研究成果,こういったことについてもしっかり学んでほしい,勉強してほしいということを要望いたします.


そして,安倍総理ぜひ,日本人というのはすぐ謝るんですね. 謝ると,謝ったのに許さないのはけしからぬといってまた怒られるぐらいですけれども,国際政治においては,謝ったら,ではどうしてくれるんだと,賠償はどうするんだという話になるんです. 我々日本人というのはそういう意味で本当にダブルスタンダードの中で生きていかなきゃいかぬなと,こう思うんです.


しかし,言われたことについて違ったら反論しないとこれは認めたことになるわけですから,やはり美しい国は強くなきゃいかぬです. そういう意味で,これからも我々は,違うことについて,間違ったことについてはやはり反論していく,そういった勇気,強さも私は必要だと,このように考えているところでございます.


ところで,そういう国際化といいますか,どうも日本人というのは井の中のカワズみたいなところがあります. なかなか国際化になじみにくい. その中で,私は,ぜひ英語教育について,これは大臣にお願いしたいんです.


以前,シンガポールに行きましたとき,あそこは高校を卒業するとき高校卒業認定の試験があるそうですけれども,三カ国語がその中に入っているというのですね.


先ほど私は国語の重要性を言いました. 国語には本当に力を入れなきゃいけませんが,この国際化社会においては,やはり英語はどうしても若いうちに,特にネーティブの先生方に耳から,口から教わることが一番大事なことじゃないか,こう思うんですけれども,大臣の見解をお聞きしたいと思います.


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文部科学委員会 168衆議院 第2号 2007/10/24
http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/009616820071024002.htm

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○西委員 公明党西博義でございます.


大臣,このたびは御就任まことにおめでとうございます. 御活躍を心よりお祈りいたします.


早速でございますが,質問に移らせていただきます.


初めに,教職員の定数改善についての御質問をさせていただきたいと思います.


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続きまして,教科書検定についてお伺いをしたいと思います.


先日,沖縄の方が私のところに見えまして,私,残念ながらいなかったんですが,教科書検定意見撤回を求める県民大会実行委員会という,この代表の方が決議書を持ってお見えになりました. 秘書の話によると,その中のお一人が,私たちは政治介入とか何かを求めているわけではない,歴史を正しく伝えたい,その思いだけで行動しているというふうに議員に伝えてほしいと言ってお帰りになったという話をお聞きしました.


私自身も,歴史認識など教科書の内容に関しては当然政治介入はすべきではない,こういうふうに思っております. ただし,今回の問題では,現行の教科書検定に至るプロセスについて,制度的にやはり考え直さなければいけない問題があったのではないかという気がしております.


そこで,きょうは,この点について改善点を探るべく若干の議論をさせていただきたいと思います. 既に大臣もおっしゃっている部分もあると思うんですが,それを踏まえた上でお話し申し上げたいと思います.


教科書用図書検定調査審議会は,学習指導要領や教科書用図書検定基準に基づいてその内容を審査する,こういうことになっております. その審議会の提言に沿って,文科省は,ふさわしくない文言について再度検討するように出版社側に伝える,それを受けて,また出版社が内容についての記述を検討する,こういう順序になっております.


さて,今回の問題では,申請用の教科書の記述が変わった,つまり,まず初めに出版社側の記述が変わったということではないというふうに理解をしております. それでは何が変わったかというと,これはつまるところ,検定する側の基準が変わったということが今回のあの結論ではないかというふうに思います.


審議会の審査に先立ち,検定申請のあった教科書については教科書調査官の調査が行われます. 教科書調査官は,審議会に,調査審議の参考となる資料として調査の意見書を提出する. 私は,この教科書検定制度の問題の一つは,この調査意見書の扱い,これをどうするかということにあるというふうに思っております.


つまり,この意見書は,参考資料というものの,実質上,学習指導要領や教科書図書検定基準以外の基準というふうに個別問題としてはなっているのではないか. 意見書は,教科書調査官が意見書をまとめるときに専門家の意見を聞くとか,審議会はそれを参考にしてしっかり議論をするということが前提となって初めてその意味をなすものだというふうに思いますが,今回は,残念ながらそういう前提が崩れている,十分な参考意見を聞き,十分な審議が行われた上で,その結果が出版社側に伝えられるという丁寧なプロセスが残念ながら崩れていたのではないかというふうに考えております.


さらに,調査意見書によって歴史認識にかかわる記述が変更されるということを考えるときに,他の,学習指導要領や教科書用の図書検定基準の改正では,それぞれ中教審や教科書用図書検定調査審議会の議論を経て,その議論も周知されながら改正されることと比べると,その扱いが軽過ぎたのではないかというふうに思っております.


もちろん,調査意見書のすべての意見についてこういうことをやろう,つまり,てにをはを変えることまでそういうプロセスを経るということを言うわけではありませんが,少なくとも調査意見書の歴史認識の変更にかかわるものについては学術的に公正にオーソライズするプロセスを明確にすべきではないか,こう考えているわけでございます.


現在,審議会の透明性の確保や情報公開,さらに沖縄条項の設置なども検討課題となっているというふうに聞いておりますが,あわせて制度上の問題を見直すということを提案したいと思います.


例えば,調査意見書にかかわる専門家の意見の聴取を,先ほどのように歴史認識にかかわる大きな変更の場合には義務づける,それから,変更の根拠となった資料等をきちっと添付する,それから審議会の専門家の議論の確保を要請する,それから議論となっているテーマの周知などが少なくとも必要ではないかというふうに私自身は考えておりますが,このことについて御意見を賜りたいと思います.



○金森政府参考人 お答えを申し上げます.


教科書検定は,民間の教科書会社が申請した図書につきまして,内容が学問的に正確であるか,中立公正であるかなどの観点から,教科書検定審議会における専門的,学術的な調査審議に基づき実施しているものでございます. 一方,現行の教科書検定制度につきましては,専門性や透明性の向上など,さまざまな御意見があることも承知をいたしております.


ただいま御指摘いただきました,例えば調査意見書に関する専門家の意見の聴取の義務づけでございますとか,変更の根拠となった資料の添付,審議会での専門家の議論の確保につきましては,教科書検定における専門性を向上させるための一つの御提案と受けとめているところでございます.


また,議論となっているテーマの周知につきましては,教科書検定における審議の公開性を向上させるための一つの御提案として受けとめているところでございます. 審議の公開性の向上につきましては,これまでも,従来口頭で行っていた検定意見の通知を平成十二年には検定意見書による通知で実施することに変更したり,また,平成十三年には,検定結果の公開資料に検定意見書や修正表を追加するといった取り組みをしてきたところでございます.


今後とも,専門的な見地からの学問的な正確性を確保いたしますとともに,審議の公開性の向上と静ひつな環境の確保についてバランスのとれた審議を行ってまいりますよう努めてまいりたいと存じます.



○西委員 おおむね御賛成をいただけたように思いますが,例えば調査官から教科書会社に対する通知というのですか,これなども,表面上は一言,短い文章ですが,具体的なサジェスチョンはまた口頭であるような感じも受けておりまして,個々の問題に対してきちっとした透明性,公開性,これをできるだけ確保するようにお願いをいたしたいと思っております.


続いて,学習指導要領の絶対評価についてでございます. 実は,私自身もまだ十分な調査ができておりませんが,少しこのことについて考えていきたいと思います.


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○小宮山(洋)委員 民主党小宮山洋子でございます.


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○小宮山(洋)委員 次に,私も教科書検定の透明化についてちょっと大臣のお考えを伺いたいと思います. もういろいろな議論が行われていますので,細かいことは申しません.


一つ目は,やはり政治が介入するのは私もいけないと思います. ただ,福田内閣になって,やはりいろいろな世論の声も受けて,これは再検討するという方向が打ち出されると思っていまして,どうやるかということで大変御苦労いただいているんだと思うんですね.


私どもの文部科学の部門会議でもヒアリングを二回ほどさせていただいて,局長にもおいでいただいていますけれども,その中で,私どもが聞いたところでは,教科用図書検定規則の第十三条「検定済図書の訂正」に基づいて訂正される,そして,その中身としては十三条の二項にある「学習を進める上に支障となる記載」に該当するということで訂正するというふうに聞いておりますが,そういうことでよろしいですか.



○渡海国務大臣 この十三条の一項,二項というのは,実は教科書会社の方から出されるわけでございますから,我々が今の段階で,これはあくまで予想でしか言えないわけでございますが,今回の全体の状況を考えた場合には,恐らく今委員がおっしゃったような,十三条の二項ということになるのではないかなと,これはあくまで予想でございます,というふうに考えております,予想しております.



○小宮山(洋)委員 今回の検定結果がどのように出されたかについては非常に不透明だと思っております.


教科書調査官の調査した結果から出された沖縄戦の集団自決について,審議会では一切意見は出なかった. その調査官は四人おいでで,メーンの方,それに,サブでやる方と. 最後は合議でやるということですが,その四名とも前回の教科書検定のときと同じメンバーなんですね. しかも,特に参考にしたとされる三冊の著作物,これも前回の検定前に出版されたものばかりなんです. それで,現地での聞き取り調査なども行っていない. そうすると,なぜ今回考えを変えて,こうした検定結果になったのか. それはやはり,そのときの政治のさまざまな空気などが影響したのではないかという意見も多く聞かれているのが現状です.


渡海大臣は,十月九日の閣議後の記者会見で,検定審議会が非公開で開かれていることなど,今までのやり方でよかったかどうか検討してみたい,変えなければいけない部分があれば当然変えていく,基本は公開ということだが,さまざまな疑義が生じないようにという面において,公開ということが大事なのではないでしょうかという趣旨のことを述べていらっしゃいます.


透明性をこれから高めていくということが大事だと思いますが,大臣のそれについてのお考えを伺いたいと思います.



○渡海国務大臣 そういうふうに申し上げました. その後,いろいろな可能性について,私なりには,ああ,こういうこともできるかなとか考えておりますが,最終的には,やはりこれも審議会の先生方の意見も聞かなきゃいけない. と申し上げますのは,やはり大事なことは,審議会というものが,先ほどから盛んにお話が出ていますように,いわゆる政治的圧力がかかるとか,政治的じゃなくてもいろいろな圧力がかからないような静かな環境の中でやっていただく必要があります. そうしますと,今考えられるのは,やはり後からいろいろな疑義がかからないように,終わった後に何らかの公開というものを図れないかなと.


基本的には,審議会は,特に部会は,今までも議事録も非公開でございますが,それを全部そのままいくのかどうか,そういったことも含めて,今,予断を持たないで,少し,審議会の委員の先生方にも御意見をいただきながら,今回これだけ疑義が出たわけでありますから,やはりその反省としてそういったことを考えていきたいという意味で申し上げた次第でございます.



○小宮山(洋)委員 真剣に考えていただいているという姿勢は今の御答弁からもわかったんですが,静かな雰囲気の中でというのが,やはり密室で,見えないところで行われているということと同じことにならないようにしなければならない. 先ほど西委員からも幾つか,参考にしたものをつけるとか,御提案がございましたけれども,私どもも,党の中で教科書検定の勉強会を立ち上げて,今いろいろ検討もさせていただいているところですので,どのように透明性のある教科書検定を行うかということについては,今後もぜひ建設的な議論をさせていただければというふうに思っています.


ここからは,ちょっと幾つか,私もずっとこれまで,議員になって十年になりますが,その前からも含めて,子供の命とか子供のことをずっとやってまいりまして,今回こういう役目になりましたので,ぜひ,教育の中でも,子供の命とか尊厳が守られる,これは最も大事なことだと思っておりますので,そういうことについて少し具体的な点で大臣のお考えを伺っていきたいと思います.


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○牧委員 民主党牧義夫でございます.


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最後に,時間がございませんから,先ほどもちょっと話題になっておりますけれども,教科書検定問題について,私も時間の限り,一つだけちょっと聞かせていただきたいんです.


さっきの検定規則十三条二項に基づく訂正の申請が出るであろうという予想をしているというお話ですけれども,ただ,例えば十月一日の町村官房長官の記者会見,ここでの発言を聞いていると,沖縄の皆さんの気持ちを何らかの方法で受けとめ,修正できるかどうか,関係者の工夫と努力と知恵があり得る,渡海文科相にもそのように指示をしているというお話があるわけです. 私は,実はこれに基づいて教科書会社に訂正の申請を出してくださいと言っているんだというのが一番正直なところだと思うんですけれども,そうじゃないんですか.



○渡海国務大臣 記者会見で言われた言葉の意味というのは,私も当時,実はそういう指示を受けたというような認識は余りありませんでした.


官房長官とはお話をしました. こういう状況を受けてしっかりと対応してくれということは言われました. しかし,それは具体的な内容は一切ありませんでしたし,その後官房長官とお話をしたことも,かなりたってから,今こんな状況ですという御報告は,ちょっと今明確に日にちは申し上げられませんが,いたしましたけれども,二週間ぐらいたった週末だったと思います.


その記者会見で,それは文部科学大臣のあなたがしっかりしなきゃいけないことでしょうということを言われたんだというような思いでございました,私は,あの町村さんの言葉を. ですから,指示をされて何をやったというより,この問題にしっかりとあなたが対応するんですよと言われたというふうに私は理解をいたしております.



○牧委員 ちょっと時間がないのでここでやめますけれども. 本当はもっと深くお話ししたかったんですけれども.


この問題にとおっしゃいましたけれども,この話についてはもう既に通常国会でも質問がされて,伊吹大臣も,今事務次官になられた銭谷事務次官,当時初中局長も,的確に答弁されているんですよね. それがなぜ変わるのか. 私は,なぜこれが今問題になって,問題というのは一体どこにあるのか.


恐らく,あの沖縄の集会に集まった人たちの頭の中にも,いろいろな思いがそれぞれあると思うんです. 違った思いもあると思うんですね. 実は,検定の内容について,趣旨について理解をしていない人も大勢いるんじゃないかなと私は逆に思うんですよ. 中には,あたかも軍による強制がなかったと記述させたかのように誤解をしている人も,あるいは国民の中にも大勢いるんじゃないかなと思うんですよ.


文科省として,やはりきちっとそこら辺のところはまず国民に説明する. 一体この何が問題になっているのかということを説明していただきたかったな. 今からでも遅くないと思うんですけれども.


そして,さっきもお話があったように,私たちも,あるべき検定制度の姿については,これからこの問題とは切り離してじっくり議論していきたいと思っておりますけれども,事今回の話にしても,余り変な,ふらふらした態度をとって将来に禍根を残すことがないように私からお願いを申し上げて,時間が過ぎましたので,何か一言あればおっしゃっていただいて,質問を終わります.



○渡海国務大臣 ふらふらしておると言われると私も困るんですが,検定制度はしっかりとやはり守らなきゃいけないというのは,これはもう皆さんお考えですよ. その中で,やはり今起こっていることをどう受けとめて,どう対処していくかということなんだろうと思います.


私は,一切の自分のある意味の思いなり,それから自分の政治的な考えは捨ててこれにかからなきゃいけないんだ,そういうつもりで今までやってきたつもりでございます.


それから,牧先生のおっしゃる,もう少し説明をしなさいということに関しては,もちろん国会では説明をしておりますが,そういうことを考えながらこれからもやっていきたい. また,今回もしそういうものが出てきましたら,それがどういう経緯で最終的にこうなったということを当然説明する時期が来るでしょうから,そのときにはきっちりと説明責任を果たしたいというふうに思っております.



○佐藤委員長 以上で牧義夫君の質疑は終了いたしました.


午後一時から委員会を再開することとし,この際,休憩いたします.


[午後零時七分休憩]


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○佐藤委員長 以上で松本大輔君の質疑は終了いたしました.


次に,保坂展人君.



○保坂(展)委員 社民党保坂展人です.


きょうは,渡海大臣,池坊副大臣と政治家同士の議論をさせていただきたいと思います.


私もそうですが,戦争が終わって十年後に生まれる,同僚国会議員の多くも戦後世代だと思います.


ところで,今回沖縄で教科書の問題,私もその集会にも行ってきましたけれども,大変多くの方が集まる,そして声を上げるということがあり,この委員会でも議論がされています. ところが,この沖縄戦で何があったのかという問題は,今こうやって議論ができるのは,実は私もその集会の翌日に渡嘉敷島というところに行って,当時十五歳の小嶺さんという方と,当時三十代で,お子さんを連れて集団自決の日を迎えた北村さんという九十代の方ですけれども,お話を聞いてきました. 十年後にこれができるのかな,あるいは十五年後にはどうかなと思うと,今しかできない議論なのではないかというふうに思います. ですから,修羅場をくぐって九死に一生を得られた方たちがまだお話ができるというところにいるわけですから,きちっとした議論をしていきたいというふうに思うわけです.


まず,渡海大臣に伺いたいんですけれども,さきの沖縄戦,国内で唯一地上戦が行われたということで,たくさんのことがあるわけですけれども,特に印象に深いこと,沖縄戦についてこの点が特徴的だと思うという認識を端的に伺っておきたいと思います.



○渡海国務大臣 保坂先生のお話,前にも聞かせていただきました.


沖縄戦についての印象といいますと,我々は読んだり,聞くしか仕方がないわけでありますが,しかし,要するに住民を巻き込んだ地上戦であるというのが一番の特徴であろうというふうに思っております.


それと,一点,いつも私は思い出すんですが,初めて沖縄に行ったときに,海軍のごうへ入りまして,そして大田中将の言葉が書いてありますね. 要は,沖縄県民かく戦えり,県民に対して後世の特別の御高配を賜らんことを,これが,いつも私自身も考えていることでございます.



○保坂(展)委員 この点について,池坊副大臣はどうでしょうか.



池坊副大臣 私は先日,沖縄の方々の代表者から集団自決のことに関しての要望書をいただきました. また,きのうも,八十二の私の知人が,私は体験したんだと言って,私,しかられました.


沖縄に参りまして初めて,と言っては沖縄の方に申しわけないんですが,初めて行ったときに,ああ,そうなんだ,本当に日本で唯一,地上戦で激しく県民の方々が苦しんだ地なんだという思いを実感として受けとめました.


それと同時に,そういう痛みや苦しみを我が事として受けとめて,国民一人一人が自分のこととして痛みや苦しみを分かち合っていく,共有していく. そして,戦争というのは,本当に罪のない,まじめな人たちを不幸に陥れていく. その戦争の悲惨さとか苦痛さ,そういうものを次の世代に受け渡していかなければいけない,伝えていかなければいけないんだな,それを伝えていくことが世界平和に結びつくんだなという思いを私は沖縄に立ったとき感じましたし,今もその思いを持っております.


人の痛みに思いをはせるというのは,私は,人間として持つべき,持たなければいけない人間としての最低のルールであり想像力だと思います. それを教えていくのが,私は教育の大きな役目の一つだというふうに今思っているところです.



○保坂(展)委員 それでは,渡海大臣に具体的にちょっと聞いていきたいと思うんですね.


まず,私が行った渡嘉敷島というのは,米軍が最初に大艦船軍団で来て,そして,空襲から艦砲射撃から,そして上陸ということがあった,一番最初の時期の戦闘があったところ. そこで三百人を超える方が亡くなっている. いわゆる集団自決ですね. そういう現場もこの前行ってまいりました.


生存者の方,そしてもう亡くなった方が過去に村史とか県史でお話しになっていることを総合すると,必ずしも同じ場所で同じように手りゅう弾が渡っているというふうには言っていらっしゃらないんですが,大筋,防衛隊の方にもらったとか,あるいは,二発もらった,一つは敵を撃退し,一つは捕らえられるぐらいだったら自決しろと,こういうふうに言われたという人もいるし,ただ黙って渡されたという人もいるわけなんですね.


そこで,立場を置きかえてみると,もし,そうした見たこともない米軍の艦船に囲まれて,そして手りゅう弾を二つ渡されたときに,住民の方はどう感じたかということを渡海大臣ならどう考えますか.



○渡海国務大臣 その場に立ってみないとこれはわからないと思うんです. といいますのは,例えば,私は,多分こう思うだろうというのは,大変これは重い発言だと思っております.


いつも私は,保坂先生とはちょっと世代も少し上ですが,私の地元に,特攻隊,知覧へ行くまでに加古川におりたんですね. その碑があるんです. その供養に行くときに,では,その状況で自分がその年齢であったらどう思うかということを,毎年そこの碑に行くたびに考えるんですね. 同じように行けたかどうか,いや,そうじゃなくて,おれは怖くて乗れなかったんじゃないか.


多分,そこでその状況のときにそうされたらといっても,これは実はなかなかお答えにくい質問でございますけれども,一般的に,二つ渡されたら,一つはこれに使え,一つはこれだというふうな感じ方をされるんじゃないかなというふうな想像ぐらいはできるのかな,そういうふうに答えさせていただきたいと思います.



○保坂(展)委員 そうした集団自決から生き残った方の証言には,やはり,捕虜になって敵の手に落ちるぐらいだったら,敵から凌辱を受けるのは確実だからみずから死を選ぶべしというふうに常日ごろ言われていた. それは教育の中でもあったし,その後に,戦争というか米軍が近づいてくる過程の中でもあった.


問題は,手りゅう弾を渡されたときに,果たして,何も言われなくても,そしてまた,あす米軍が上陸だというような状況で,大変緊張が高まっている状況で渡されたというのであれば,今ちょっと明快に,そんな感じというふうにおっしゃったんですけれども,やはりみずから死ぬ道具として一つはあるなというふうに住民の方が感じたとしても,これは不思議じゃないと思います. その点はいかがですか.



○渡海国務大臣 先ほども申し上げましたように,これは想像の域を出ないわけですね,正直言いまして. それを,多分そう感じられたと思うということを言い切ることもできないし,また違う受け取り方もあるんじゃないかな. やはりこれは,ある意味での極限の状態の中での人間の思いでありますから,それを断定的に今私が言い切ることは正直なかなか難しいな,そう思います.



○保坂(展)委員 実は,この問題のポイントは,今非常に抽象的な議論をしているようですが,ここに尽きると思うんですね.


もう一つの使い方というのは,両方とも投げるということですよ. つまり,敵と戦うということですね. では,住民は,ふだんから手りゅう弾の扱いになれていたかどうか,あるいは投てきする訓練などをしていたかどうか. 記録を読む限りないんですね. 先ほど言ったような,一つは敵に向かって,一つはみずからというようなことは言われていたという証言は多々あるわけです.


だから,そういう証言が,沖縄の集会では,じいちゃん,ばあちゃんがうそをついていると言うんですかという高校生の訴えもありましたけれども,つまり,一つは自決用にというふうに受けとめたとしても不思議ではないのではないかというふうに私は言っているんです. いかがですか.



○渡海国務大臣 決して否定をするものではありません. そういうふうに受けとめる方もいらっしゃっただろうし,その状況の中でそれぞれがいろいろな判断をされたんだろう. 一番しょっぱなに,保坂先生,割と親しくしていただいて甘えて言いますが,先生ならとおっしゃったものですから,これはなかなか難しいなというふうに思います.



○保坂(展)委員 では,続いてですけれども,慶良間諸島で,渡嘉敷島以外にもそういった集団自決は起きているんですね,何カ所かで. ところが,集団自決が起きていない島もあって,前島という島なんですけれども,そこには軍隊がいなかったんですね. つまり,軍隊がいないということと集団自決がなかったということと関係があると私は思うんですね.


というのは,武器弾薬というのは厳重に管理されているわけで,だれもが自由に持ち出すような状況には当時とて絶対なかっただろう,軍が管理している手りゅう弾ですから. その軍が管理している手りゅう弾を島の人が,軍に参加をした防衛隊,この人たちが配ったという記録があるわけで,手りゅう弾の出どころはどこなんだというと,軍なわけですね.


つまりは,軍が沖縄戦の一番の,最先頭の,これは特攻作戦だったと思うんですが,こういう中で陸上戦など想定していなかった,しかし,手りゅう弾はあった. その手りゅう弾を防衛隊を通して渡したのか,その辺は明確に道筋は私も記録上見つけられないんですけれども,受け取ったという証言はある. 一方で,武器は厳重に管理されていたというのも,当時の軍隊,今もそうでしょうけれども,鉄則であるというところから見ると,軍が島に入るということ,そして軍が管理している手りゅう弾であるということ,その手りゅう弾が住民に渡るということを考えると,やはり大きな関係があると思わざるを得ないんですね. そこはどうですか.



○渡海国務大臣 それは先生のおっしゃるとおりだと思います. 基本的に,住民がもともと手りゅう弾を持っていたということはないわけでありますし,軍の関与がなかったということは,これはだれも言っていないというと語弊があるかもしれませんが,これは検定でもそのことは認めた検定になっておるわけでありますから,軍が関係なくそういうことが起こったということはないというふうに判断しております.



○保坂(展)委員 それでは,その検定の内容に入りますけれども,清水書院日本史Bでは,当初には,「なかには日本軍に集団自決を強制された人もいた. 」という部分が,検定意見,これは「沖縄戦の実態について誤解するおそれがある表現である. 」ということで,「なかには集団自決に追い込まれた人々もいた. 」というふうに変化したんですね.


これは,他の議員も指摘しているかもしれませんが,渡海大臣,よろしいでしょうか,つまりは,すべての集団自決は日本軍によって,例えば軍の命令によって強制され行われたとは教科書も書いていないんですね,「なかには」ですから. 多分その幾つかのケースでは,あるいはそれはパーセンテージはわかりませんけれども,これだけ読むと,「なかには日本軍に集団自決を強制された人もいた. 」ということですから,これはどういう誤解が生じるんでしょうか.



○渡海国務大臣 この検定意見は,すべてにおいて軍が強制したものではなかったという,誤解が生じるおそれがあるということでつけられたという報告を受けております.



○保坂(展)委員 私も決算委員会などで,渡海大臣に本当に厳しいアドバイスというか激励もいただいて,非常に論理的に,もうおわかりになっていることだと思います. 私の意図はわかると思うんです. 大臣という立場でなかなか答弁は難しいのかもしれませんが.


もう一度,よろしいですか. 今の大臣の答弁をそのまま当てはめても,「なかには日本軍に集団自決を強制された人もいた. 」という日本語は,つまり,すべてというふうには言っていないわけですね. そうすると,どういう誤解が生じるんでしょうかということについて,もう一度お答えいただけるでしょうか.



○渡海国務大臣 強制という言葉の意味をどういうふうにとるかということで誤解があると解釈をされたんじゃないかというふうに報告はいただいておるところでございます. 集団自決をされた沖縄の住民すべてに対してその自決の軍命が下ったか否かを断定できないという判断に基づいてあのような検定がなされたというふうに報告を受けております.



○保坂(展)委員 そうすると,論理的に進めていくと,今大臣がおっしゃったように,強制というところが引っかかったということですね,強制.


そうすると,日本軍によって集団自決を強制された人はいなかったんですか. つまり,すべてそうだったという話じゃなくて,沖縄戦の中で日本軍によって集団自決を強制された人もいたんじゃないですか. これは県民大会の皆さんの主張なんかで大きく沸き立っているところなので,お答え願います.



○渡海国務大臣 私が理解しておりますのは,報告を受けていますのは,すべてにおいてそういう強制,一部においてもその強制みたいなものが行われたかどうかがすべてにおいて断定をできない,断定をできないから誤解をするおそれがある,そういうふうに検定がなされたというふうに報告を受けております.



○保坂(展)委員 伊吹文科大臣は,議事録を読むと,すべての集団自決が軍によって強制されたということではないという趣旨の答弁をされているんですね.


今のお話は,「人もいた. 」ということですから,つまり,集団自決の中にはいろいろなスタイルがあるでしょう. しかし,その中で,軍に強制された人もいたという表記が誤解だということであれば,当時の日本軍に集団自決を強制されたケースは文部科学省としては今のところ確認していない,つまりは,それがあったということは言えない,教科書で書くのはやはり誤解を招く,そういうことなんですか.



○渡海国務大臣 ちょっと言葉が足りませんでした. 申しわけありません.


伊吹さんが説明をされていたのが,一応この検定意見のつけた理由でございます. すべてにおいて強制されたということは断定できない,これは教科書検定委員会において付された意見でございますから,そういうことで付されたということでありまして,検定委員会で調査書が出されて,検定委員の,審議委員の先生方が,一応これでいいだろう,そういう手続においてこの検定意見が付されたというふうに承知をいたしております.



○保坂(展)委員 ですから,軍の関与というのはお認めになったけれども,私も,もうああいう戦時中の極限状態ですから,その強制なりなんなりということが文書とか口頭命令という形じゃなくても起こったんだと. それは伊吹さんが言うように,すべて,あらゆるケースにおいて軍が強制した,それは言えないかもしれない. しかし,その伊吹大臣の話は,すべてそうじゃないという話であって,部分的にはあるという話じゃないですか. そうなれば,「なかには日本軍に集団自決を強制された人もいた. 」というのは余り誤解は生まない表現なのかなと.


沖縄県民の方ももっと違う記述の,これはわかりやすいからこの例を出したんですが,大臣,教科書検定の検定意見というのは,一度ついてしまえば未来永劫変えられないんですかね. 文部科学大臣の当委員会における答弁と,教科書調査官の意見ですか,これとどちらが重いんでしょうか.



○渡海国務大臣 どちらが重いかというよりも,検定制度というものは,私が諮問はします,答申はしますが,その中身について,要は,政治的な介入といいますか,自分の意見でもってこれこれこういう検定意見をつけろとか,こういうふうな変更を行いなさいということはできない,できない仕組みになっている. また,だからこそ政治的中立なんだというふうに理解をいたしております.



○保坂(展)委員 今の議論を聞いていて,池坊副大臣,やはり沖縄の人たちの,私も実は百回以上沖縄に行っているんですが,沖縄戦の話も随分聞いたつもりではありましたけれども,今回その現場に行って,もう本当に背筋が凍るというか,まだまだその当時の生々しい記憶を抱えて,高齢になりながら,もうむせび泣きながら,やはり自分の手の中で子供が死んでいった様子であるとか,そのときの何とも言えない恐怖と,そして,何が起こったんだろうか,次々と人が亡くなっていくという話を聞いて,ああ,私もわかっていなかったなと思いますよ.



ですから,沖縄の人たちがこれだけ大勢集まり,そして声を上げたということは,私は技術的な問題じゃないと思うんですね. もう一度沖縄戦であったことというのを,しっかり事実をきちんと見て,そして,先ほどの検定意見は,軍が強制した人,場合もあったということについても誤解があるというふうについているわけですから,そうすると,論理的に詰めていけば,軍による強制はなかったということを文部科学省は,この検定で歴史を塗りかえてしまうんだ,現にこういう声が上がっているわけですね. そして,検定意見を撤回してほしい,そして記述を復活してほしい. 記述の復活については訂正申請というようなことが言われていますけれども,先ほど言ったように,一回つけた検定意見は残るわけですね.


これについて,今しかできない議論だと思うんで,どうですか,副大臣.



池坊副大臣 私は,日本軍が強制したかどうかはわかりませんが,関与したことは事実ではないかというふうに思っております.


検定委員会が一度決めたこと,それは検定委員会がなさったことですから,私どもが,それが間違っているとか,それを訂正しろとか言うことは,やはり民主主義,公平性といった視点からは正しいというふうには思わないんです.


県民の方々のお気持ちを考えますときに,教科書会社も,これはもうちょっと考え直した方がいいんじゃないかというような動きも今あるようです. そういう申請を受けましたならば,もう一度検定委員の方々がこの問題について審議なさるということは,私はあってしかるべきというふうに思います. 文部科学省がそれをするべきだというふうなことの指示はしてはならないのではないかなというふうに今考えております.



○保坂(展)委員 過去,検定制度が今と違った八六年の新編日本史のときには,検定が終わって,そして,これは見本本ですかね,そういった本が最終的に出る前に,これは当時の,八六年ですから,その前の近隣諸国条項ができたときの教科書問題を踏まえて,異例ではあったけれども,検定そのものを修正したという経過があったようであります.


渡海大臣,前予算委員会で,文部科学省の検定制度にも幾多問題もあり,その透明化ということをおっしゃっていますね. ただ,この沖縄戦の集団自決のこれだけ重い実態について,それは,私は研究していますよという方は,委員の中に必ずしもいらっしゃらなかった. その調査官が論拠とされたのは,訴訟が起こったりしたことも配慮したということでありますけれども,もっと実態を踏まえた,これはもう国民的な議論,特に沖縄の人たちの問題であるとともに,日本にいる我々がこれからどういう国づくりを目指すのかという問題でもあり,沖縄の問題で沖縄の方の話ということじゃないんですね.


そういうことから考えると,一体何があったのかと,今渡海大臣ともちょっと議論がありましたけれども,一体何があったんですかということを,これは体験者が存命のうちにしっかり聞いておく,そして,もし事実を,文科省の検定意見が誤っていたのであれば,あるいは踏み込み過ぎたり,あるいはその本質からずれたところにあったのであれば,これはどうしたらいいのかということを本気で考えていただきたいんですね.


今の制度では,検定意見がついたら,これは今,訂正申請を待つということで,検定意見そのものは残るわけですね. ただ,沖縄の人たちが大きく声を上げたのは,この検定意見そのものを撤回してほしいと. 渡海大臣がおっしゃっているのは,それは政治介入になるから,これはなかなか難しいんですよと. しかし,これだけの議論があって,今新たに随分証言も出てきました. そうすると,新たに現時点における認識を反映させて,やはり教科書の記述というものを正確なものにしてほしい. そのための制度を見直したりすることも必要なんじゃないですか.



○渡海国務大臣 問題は,大きく分けて二つあると思っております.


一つは,今先生おっしゃいましたように,最終的にこの問題に今回どのように対応していくかということでございますが,これは今池副大臣からもお話がございましたように,すべての,五社から訂正申請が出るということで,手続の相談がございます. これについては真摯に対応していきたい. そして,やはりこれは再度審議会の委員の先生にお諮りをして,今先生がおっしゃいましたように,この間の状況の変化というものがあるわけでございますから,そのことも踏まえて最終的に御判断をいただくということが適当であるというふうに考えております.


もう一点は,この検定制度が,今回のことを受けて今のままでいいのかどうか,これは幅広の議論と,それからもう少し絞った,透明性を上げていくという議論と二つあると思いますが,後者の方は,ぜひ私の責任においてやらせていただきたい. それは,やはり検定というのは静かな環境のもとでやっていただかなきゃいけないということは,これは先生も御理解いただけると思います. そのもとで,今回もし出されて,終わったら,その終わった段階でしっかりと途中の経緯も,今までは全部これは非公開であったわけですが,部会の議論も少しは出していただくようなこともお願いをしたいというふうに考えているところでございます.


それと同時に,この検定制度,最後の改正が平成元年ですかね. それら少し時間がたっておりますので,少しいろいろ検討するのも必要かなと考えております.



○保坂(展)委員 どうも,文科省からこういった調査意見書ですか,こういうのをいただいて,見ると,これは一つ一つ議論し出すと切りがないんですが,調査官の方が,この会社の何カ所というのを出して,それによって流れ作業で検定が進んでいくというふうになっているようですが,これだけ問題になって,例えば訂正申請が,今御相談があったということですけれども,審議会でお話しになったら,その審議委員が調査官に対して,この意見についてまた意見を出すというような回路がないんですね. 調査官が意見を出して,これはずっと永劫残るんだけれども,審議会が相談して,例えば,この意見について,こうですよ,誤解を与えていないですよという意見を出すようなこともあっていいと思います. それについてだけ.



○佐藤委員長 質疑の持ち時間が終了いたしておりますので,簡潔に御答弁をお願いします.



○渡海国務大臣 それは,原則的に,調査書は出しますが,この検定意見でいいかどうかというのは審議会で審議をするわけですね. 今回,特段な意見が出なかったということで,してないじゃないかという御指摘がありますけれども,それは一応そういう手続を踏んでやっておるわけですから,審議会の委員が,これじゃおかしいよ,この検定意見じゃだめだよと言う機会は現行の検定制度の中でも担保されているというふうに考えます.



○保坂(展)委員 では,終わります.



○佐藤委員長 以上で保坂展人君の質疑は終了いたしました.


次に,石井郁子さん.



○石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子です.


保坂委員に続きまして,私も教科書検定問題について質問をいたします.


先日の大臣あいさつの中で渡海大臣は,「沖縄の集団自決に関する教科書検定の件については,沖縄県民の思いを重く受けとめるとともに,教科書検定の公正中立性の確保に十分意を用いつつ,」というふうにお述べになりました. 大臣は,今回の教科書検定において,厳正かつ公正中立に行われたという御認識でいらっしゃいますでしょうか.



○渡海国務大臣 所定の手続に基づいて行われたというふうに報告を受けております.



○石井(郁)委員 私は,公正中立に行われていれば,今日のような,こういう沖縄の県民挙げての皆さんの御要望とか,あるいは大きな社会問題というふうになってないだろうと思うんですね. そういう点で,きょうは幾つか確かめもさせていただきたいと思うんですけれども.


まず,先日,予算委員会で,我が党の赤嶺政賢議員が明らかにしたところでございますけれども,文科省職員の教科書調査官が,沖縄戦の実態について誤解されるおそれのある表現という検定意見をつけるという,これがその原議書ですよね,局長までの印鑑が押してありますけれども,これを作成すると. この案を検定審議会の小委員会にかけて,これが検定意見となって教科書会社に伝わるということになるわけですが,しかし,沖縄の集団自決に対する軍の関与について,その審議会の専門委員,臨時委員などから意見があったわけではない,教科書調査官四人の合議によって作成されたということがわかりました. 審議会の小委員会でも総会でも,それについて意見も出なかったと. しかし,この検定意見によって,今問題の,「日本軍に集団自決を強制された人もいた. 」という最初の記述が,「集団自決に追い込まれた人々もいた. 」というふうに改められたり,要するに,誤解を招くということで改められたということになって,日本軍による強制とか関与ということは削除されたんですよね. これが今回の一連の経過だというふうに思います.


ですから,このように見ていきますと,教科書検定審議会というのは隠れみのになっていたんじゃないのか. これは文科省による自作自演の押しつけではなかったのかということが明白になったというふうに私は思うんです.


そこでお聞きしますけれども,では,教科書調査官の日本史担当の方のお名前,出身大学,学部,専攻学科を教えていただきたいと思います.



○金森政府参考人 お答えを申し上げます.


お尋ねの件につきましては,個人情報が含まれますため,本人の了解がとれた範囲でお答えすることをお許しいただきたいと存じます.


現在,日本史を担当する教科書調査官は四名でございます. まず,照沼康孝主任調査官は東京大学大学院を修了しております. それから,村瀬信一調査官は東京大学大学院を修了しております. それから,高橋秀樹調査官は学習院大学大学院を修了しております. それから最後に,三谷芳幸調査官は東京大学大学院を修了してございます. 以上が,現在,日本史を担当する教科書調査官四名でございます.



○石井(郁)委員 学部,専攻をおっしゃいませんでしたけれども,これは本人の了解が得られなかったということなんですか.



○金森政府参考人 お答えを申し上げます.


各調査官の出身の学部,学科や専攻につきましては,個人情報に該当するため,お答えすることは差し控えさせていただきたいと存じます.



○石井(郁)委員 ここで個人情報を盾にとられて. おかしいですよね. だって,文科省の職員なんですから. 何で卒業学部,学科,専攻を言えないんですか. しかも,明らかにしてほしいと.


これは大事なんですよ. 何で個人情報,了解を得ないんですか. 得て断ったのなら,それはそういうこともあるでしょうけれども,得もしない. これが文科省のやり方なんですか. 私は大変問題だというふうに思います.


大学院までしか言われませんでした. 大事なのはやはり学部,専攻なんですよ. 主任の照沼氏は東大の国史学科卒業です. 村瀬信一氏も東大の日本史学科卒業です. このお二人が今当面問題にしたいことなので,私の方から申し上げておきたいと思うんですけれども.


要するに,この近現代史専門は照沼氏と村瀬氏なんですよね. お二人です. このお二人は,後で問題にしますけれども,扶桑社発行の教科書監修者である伊藤隆氏が一九七一年から東大文学部助教授を務めていた時代の教え子であります. 師弟関係なんですよ. そのことを一点お尋ねしたい.


そして,照沼氏及び村瀬氏について,調査官になるに当たってはこの伊藤隆氏からの推薦というのがあったんじゃないんですか. あるいは,両調査官の採用の経緯を教えていただきたいと思います.



○金森政府参考人 お答えを申し上げます.


それぞれの教科書調査官の専門分野に関しまして,だれから指導を受けたかということにつきましては,個人情報に該当するため,お答えすることは差し控えさせていただきたいと存じます.


ただ,教科書調査官の職務といたしましては,学問的,教育的見地から教科書が適切なものとなるよう,公正かつ中立的な立場から調査を行っているところでございます.


次に,推薦があったのかというお尋ねでございますけれども,教科書調査官に関する選考の際,推薦書があったかどうか,また,だれから推薦があったかについての資料につきましては,人事管理に関する個人情報でございまして,お答えすることは差し控えさせていただきたいと存じます.



○石井(郁)委員 非常に何か,隠そう隠そうとするところが見えるわけですけれども,これ自身が非常に問題だというふうに思うんですが,伊藤隆氏と照沼氏,村瀬氏は,伊藤氏が東大文学部助教授だったときにこの二人との師弟関係があるわけですね.


それだけじゃないんですね. もう一つの問題は,この伊藤隆氏と照沼氏は,一九八三年には「陸軍 畑俊六日誌」という共同著作も出しています. 共同著作です.


それから,村瀬氏も,文科省科研費補助金が出ている,平成九年から十年,日本近代史料に関する情報機関についての予備的研究及び平成十一年度,十二年度の日本近代史料情報機関設立の具体化に関する研究,そういう研究に参加していまして,これは伊藤氏が統括責任者なんですね. そのもとに共同研究を行っているわけであります.


そして,二〇〇〇年の四月,「新しい歴史教科書」,これは文科省に申請本として出されましたけれども,このとき同時に村瀬氏が教科書調査官になっています. 照沼氏とともにこの教科書の検定に当たっております.


こうした事実,文科省はお認めになりますか.



○金森政府参考人 お答えを申し上げます.


伊藤隆氏が受けていた科研費の研究グループに共同研究者として村瀬教科書調査官が参加していたのは御指摘のとおりでございます. 著書につきましては承知をいたしておりません.


ただ,先ほども申しましたように,教科書調査官のそういった関係と現在の職務とは関係がないものでございまして,教科書調査官の採用に際しましては,学問的,教育的見地から教科書が適切なものとなるよう公正かつ慎重に調査を行うという教科書調査官の職務にかんがみ,慎重に選考を行っているところでございます.



○石井(郁)委員 次に,審議会について伺いますが,教科書検定審議会に日本史の小委員会がありますね. この日本史の委員の,近現代の専門家についてお名前を明らかにしてほしいと思います.



○金森政府参考人 お答えを申し上げます.


教科用図書検定調査審議会の日本史小委員会の委員につきましては,古代から現代の分野にわたってバランスよく構成をしているところでございます.


審議会委員の氏名の公表の扱いにつきましては,正委員,臨時委員につきまして氏名や職名を公表しておりますけれども,静ひつな環境における委員の自由闊達な意見交換を確保するため,委員の分属については公表していないところでございます.



○石井(郁)委員 何でこの審議会委員の,専門委員の名前は出せないんですか. おかしいでしょう. 公正中立な審議会だ,そこで学術的に審議を行っているというわけですから,どういうふうにそれが行われたのかという点で,どなたがその専門委員なのかということは最低必要な,明らかにすべきことだと思うんですが,おかしいんじゃないですか.


この点は,大臣はいかがお考えですか.



○渡海国務大臣 この委員の先生方につきましては,実は名前が知れたことがありまして,非常に,家までマスコミが押し寄せるというふうなことが起こりまして,そして,そういう環境下では静かな議論をしていただけないというふうなこともありまして,今公表を控えさせているということを御理解いただきたいというふうに思います.


名前を出さないから中立,公平,公正にならないということではないというふうにも考えます. その点は御理解をいただきたいというふうに思います.



○石井(郁)委員 しかし,今大問題の教科書問題,教科書検定のあり方をめぐっての議論をしているときですから,やはり調査官,そして審議会の委員,どういう方がいらっしゃるのかというのは,私,隠す必要はどこにもないと思うんですよ. それは,マスコミが来るというのは別の問題としてあると思うんですけれども,やはりこの委員会の審議のためにはぜひそれは公にしていただきたい.


これは,委員長に,ぜひお取り計らいをお願いしたいと思いますが.



○佐藤委員長 ただいまの御要求につきましては,理事会において協議をいたします.


では,質疑を続けてください.



○石井(郁)委員 私が調べてみたところ,日本史小委員会で近現代史の審議委員四人の方がいらっしゃるんですけれども,一人は駿河台大学教授の広瀬順晧氏,九州大学大学院教授の有馬学氏,国学院大学教授の上山和雄氏,筑波大学教授の波多野澄雄氏,これは間違いありませんか.



○金森政府参考人 お答えを申し上げます.


審議会の委員の氏名につきましては,正委員,臨時委員とも氏名及び職名を公表しておりますけれども,その分属,日本史小委員会にだれが属しているかということにつきましては,公表を差し控えさせていただいているところでございます.



○石井(郁)委員 非常にかたくななんですけれども,この四人でこれは間違いないと思うんですね. もし間違っていたら大変大問題になりますけれども,間違いないという前提でお話をさせていただきます.


さきに挙げました伊藤隆氏,統括者の文科省科研費の,共同研究でありましたけれども,日本近代史料に関する情報機関についての予備的研究,それから日本近代史料情報機関設立の具体化に関する研究,ここには,今申し上げました有馬学氏,広瀬順晧氏,そして先ほどの調査官の村瀬信一氏が共同研究者として参画をしているわけであります. だから,まさに教科書調査官,審議会委員の中に伊藤門下生がきちんといらっしゃるということなんですよ.


それから,村瀬信一と照沼康孝,有馬学氏らが共同で執筆した「近代日本の政治構造」という本があるんですけれども,この中で有馬氏はこのように述べていらっしゃいます. これは後書きなんですけれども,本書の執筆者は,いずれも先生が,先生は伊藤隆氏です,東京都立大学,東京大学に在任中学恩に浴し,学術事業に何らかの形で参画するという貴重な経験を与えられた,伊藤政治史学として結実したのであると絶賛をされているんですね.


こうして見ますと,教科書調査官は四人ですよ. この四人のうち二人,また審議会委員の近現代史の専門家四人のうち二人が伊藤隆氏の門下生です. あるいは共同研究者,共同著作者です. どうでしょうか. これで検定が公正中立に行われたと言えるんでしょうか,大臣.



○金森政府参考人 お答えを申し上げます.


教科書調査官の採用に当たりましては,それぞれの分野に対応する専門の学識を有するかどうか,また,視野が広く,初等中等教育に関し理解と識見を有するかどうかなどの能力,適性を総合的に判断して,大学の教授等や中学,高校教諭等から担当の初等中等教育局におきまして慎重に選考を行い,採用いたしているところでございます.


教科書調査官の他の人との関係が教科書検定の公正中立性に影響を与えるということはあり得ないと考えておりまして,今回の検定に当たってもそのようなことはなかったと考えております.



○石井(郁)委員 人選が公正中立とか慎重に行われているという話ですが,そういう形のことではなくて,選考の経過もおっしゃらないわけですから,そういうことではなくて,今挙げました事実そのもの,こういう関係の方じゃないですか,このことを私は申し上げているんですよ. これをしっかりと見ていただきたいと思うんですね. これは重大な問題をはらんでいるんです.


これは先ほども申し上げましたけれども,扶桑社発行の新しい歴史教科書,これは検定を合格したときには国内外から非常に厳しい批判というか反響がありまして,大問題になりました. この歴史教科書というのは,自虐史観からの脱却を掲げました. さきの戦争は自存自衛の戦争,アジア解放の戦争という,靖国史観と私たちは言っていますけれども,に基づくものでして,これまでの村山談話,河野談話など日本政府見解からも到底認められない,逸脱したものでした.


実は,この新しい歴史教科書の監修者が伊藤隆氏なんです. これはしっかりここに名前が出ています,監修者です. そして,この歴史教科書の検定に当たったのが照沼氏であり村瀬氏です. まさに伊藤門下生のお二人なんですよ. どうですか,これは. ちょっと余りにも何か,こういうことがあっていいのかと言わざるを得ません.


伊藤隆氏について私はもう少し付言させていただきたいんですけれども,安倍内閣のときには,戦後レジームからの脱却,教育再生ということが掲げられましたけれども,それをバックアップする教育改革の,日本教育再生機構というのができましたよね. 伊藤隆氏はその設立代表発起人です. そして,今日,教育再生機構の教科書改善の会というのがあるんですけれども,歴史教科書の編集座長になっていらっしゃる方です.


「教科書改善に向けての私どもの思い」というのをこの会が発表しておりまして,日本教育再生機構八木秀次理事長はこのように言っています. 「捏造が明らかないわゆる従軍慰安婦の強制連行については記述しません. 南京事件については事件そのものが虚構であるという有力な説があることにも言及します. その意味で,扶桑社版教科書はじめ,これまでの教科書改善運動の精神は正しく継承して参ります. 」だから,こういう立場の教科書こそ発行していきたいということを表明している団体であります.


だから,従軍慰安婦の強制連行はもう載せない,これはかなり教科書から削られていきましたけれども. 南京虐殺についても虚構だというふうに言っている. それから,沖縄の集団自決については,この教科書には集団自決という言葉もないんですよ. 沖縄戦で何人が亡くなったという数字はありますが,集団自決という言葉さえない,こういう教科書です. だから,こういう教科書の発行を続けようとしていることですよね.


だから,私は,この団体,こういうグループというのは,本当に歴史の事実をゆがめようとして,そういう教科書を子供たちに押しつけようとしているのではないかと言わざるを得ないわけです.


問題は,こういうことにこたえるような教科書調査官あるいは審議会委員,専門委員が配置されているということが私は重大ではないのか. こういう人たちが検定意見をつけているんだ,そして,沖縄の集団自決に対する軍の関与の削除につながっているんだと言わざるを得ないわけですが,これはまさに文科省による教育内容への政治介入そのものと言わざるを得ません. これはぜひ大臣の御見解をお聞きしたいと思います.



○渡海国務大臣 先生が感じておられるような,そのものではありませんが,似たような,疑義を持たれないかということで,私も,調査官等がいつ採用されたのか,それから,どういうことで配置をされているのかということで,随分いろいろ聞きました.


ちょっと今手元に資料がありませんが,要は,今回こういうことをやるためにそういう陣容が組まれたということがないのかという疑いの目を持って実はチェックをさせていただいたんですが,それはそうではなかったですね,少なくとも. 例えば村瀬氏でいえば,今ちょっと,そっちから後で説明をさせますが,十年ぐらい前に採用されているわけでありますし,去年までの検定にも参加しているわけですから,その限りにおいてはそういうことではないというふうに考えております.


ただ,なお,そういう力が働いてはいけないわけでありますから,私の立場からも,今後とも,公正,公平,中立に審議が行われるようにいろいろな配慮,また指導してまいりたい,そういうふうに考えております.



○金森政府参考人 補足をさせていただきます.


日本史を担当する教科書調査官四名が採用された年でございますけれども,照沼康孝主任教科書調査官は昭和五十八年に採用になってございます. それから,村瀬信一調査官は平成十二年に採用になってございます. それから,高橋秀樹調査官は平成十二年の採用でございます. それから,三谷芳幸調査官は平成十四年の採用でございまして,いずれも今回の問題の以前に採用された調査官でございます.



○石井(郁)委員 私は,今の御説明というのは,本当に何というか,文科省は歴史を踏まえていらっしゃるのかなと改めて本当に思ったんですけれども.


教科書調査官が教科書行政にどのようにこれまで介入してきたか,あなた方が一番御存じじゃないんですか. これは歴史がありますよ.


一九九八年,約十年前ですけれども,福地惇という方は教科書調査官でしたけれども,この方も伊藤氏の教え子だったんですよね. そして,このときに,近隣諸国条項があるから,日本は侵略戦争をして悪かった,書いていないとまずい,こういう発言をして調査官を解任されているんですよ. 舌禍事件というのを起こしているんですね. 今その方は新しい歴史教科書をつくる会の副会長を務めています.


等々いろいろあるんですけれども,系統的に,やはり教科書の内容を,ある特定の考え方といいますか,特定の事実を持ち込みたいという人たちが日本の教科書問題をずっと起こしてきたんじゃないんですか. それはもうざっと見ただけでも,教科書調査官制度そのものが一九五六年から始まりました. これ自身もちょっと始まり方がおかしいんですけれども. その前年に憂うべき教科書問題というのがあって,それに呼応するかのように,日本の教科書がちょっと平和と民主主義を強く出し過ぎている,もとに戻せというような形で出してきたんですけれども,例えば平泉学派,天皇中心主義を信奉するという皇国史観の東大朱光会というのがあるんですけれども,それに所属した村尾次郎氏,この方が主任調査官になっているんですよ,この当時. それ以降,朱光会の山口康助氏,時野谷滋氏など,ずっとこういう考えの人たちがやはり調査官に座ってきた. そして今,戦争で侵略したということを,侵略という言葉はやめよう,進出だと,書きかえの事件があったじゃないですか. これも国会で大問題になりました. 国際的にも問題にもなりました.


だから,一貫してこの侵略問題,そして戦争責任,あるいは日本軍の関与という問題については,先ほどの従軍慰安婦のことについても非常に激しいこのことがあって削除されまして,今は載らなくなりましたよ,教科書から. そして,今度は集団自決の問題だという流れで来ているんですね. ここはもう紛れもない歴史の事実です.


私は,だから,今回の件についての,先ほどもお話ありましたけれども,今回の検定意見,こうした文部科学省の中にある,やはり偏った教科書調査官の人選というのがあります. 歴史を逆行させる地下水脈のようなものがどうも一貫して流れているんじゃないかと言わざるを得ないんですね. それがやはり政治介入を起こして,政治問題化しているわけですよ. ここをしっかりと見ていただきたいと思うんですが,大臣,いかがですか.



○渡海国務大臣 よく政治介入というお話が出るんですが,実は,ある政党の代表が来られましたときにも,では具体的にどういう政治介入があるのか,どういう力が実はそこに働いてゆがめられたのかということを言っていただければ我が方で調査をいたします,こういうふうに申し上げました. それ以上お言葉はなかったわけでありますけれども.


基本的に,先生,今調査官にお触れになりましたが,当然,これは審議会というのは審議の委員もいらっしゃるわけでございまして,調査官の仕事は,もちろん検定意見のたたき台,調査書というのを出すわけでありますが,それに基づく資料もこういうものをそろえましたというのが基本的な仕事でございます. あくまでその部会において審議委員の先生方がそれをそのままつけるかどうかという作業もされるわけでありまして,そういったことを通じて中立公平,一部の方が例えばそういう色合いが見えるということだけで物事がそういうふうに流れているというふうに断定されるのは,ちょっといかがかなというのが正直な感想でございます.



○石井(郁)委員 最後,時間がありますので.


今問題になっていますのは,教科書検定の審議会がある,これがあるから公正中立が保たれているというのが伝わっているわけですけれども,本当にそれがきちんとした担保する機関になっているのかどうか. これは一教科書検定審議委員が発言をされていらっしゃいますけれども,独立機関ではない,やはり調査官の意見というのがかなり強く作用しているというようなこともおっしゃっていますから,そういう権限を本当に調査官がどこまで持ち得るかという問題としてもありますけれども,本当に教科書検定制度というのが公正中立だとは到底言えない中身になっているということが大事だということを申し上げているわけです.


最後になりますけれども,これは今回の一連の問題について,教科書会社の申請があれば,それで一定,記述をもとに戻すようなことがあり得るような発言に聞いておりますけれども,私は,やはり今回の検定意見,今のこういう申し上げました中身で出てきている検定意見そのものが非常に問題を持っているわけですから,この撤回以外にないわけですね. そこは私は文科省が本当に蛮勇を振るってというか,誤りを正すというか,そのことでこそ,きちんと公正中立な教科書行政をやる省として,大臣がしかるべき責任を果たしていただきたいというふうに強く申し上げたいと思います.


最後に,大臣のその点での御答弁をいただきたい.



○渡海国務大臣 検定そのものはやはりちゃんと手続に基づいて行われたと何度も申し上げております. そして,この検定制度,民間の教科書会社がとにかく教科書をつくって,それに間違いがないかどうかということをチェックする,こういうことを審議会というある意味の第三者的な立場の専門家,これが学術的な,専門的な見地から行っていただくという制度でございまして,我々がこれを撤回しろとかそういうことが言えないというところに実はこの制度の中立性,公平性が保たれている一つの理由もあるわけでございまして,その点を御理解いただきたい.


ただ,先生も今いろいろなことをお話しになりました. その中で,やはり我々も考えなきゃいけないこともあるなというふうに思っておりますので,審議会のあり方等については少しいろいろと検討をしてみたい,透明性も少し上げるように工夫をしてみたいというふうに思っております.



○石井(郁)委員 これは先日の朝日新聞だったんですけれども,文科省の,いつごろでしょうか,教科書検定課長の方が登場されていましたよね. それでこうおっしゃっていましたよ. 「当初の意見がなぜついたのか,説明が十分されているわけではない. この経過をどう社会に説明するのかは,文科省に課せられた宿題だ. 」やはりそうおっしゃっているじゃないですか,中の方自身が. 国民はやはり納得していませんよね. 何でこういう検定意見がついたんだ,急に今ついたのかという問題ですよ.


だから,きちっとやはり透明性そして公正な教科書行政を本当にするというところが文科省に今課せられているんだということを重ねて申し上げまして,きょう申し上げた幾つかはぜひ検討していただきますようにお願いをして,質問を終わります.



○佐藤委員長 以上で石井郁子さんの質疑は終了いたしました.


次回は,公報をもってお知らせすることとし,本日は,これにて散会いたします.

午後三時八分散会

*1:だらだらした2000行ほどの抜書きが途中で切れるため=64kBの壁があるのか,11/01,抜書きを大幅削減しリンク集に書き直し