『世界』2007/05編集後記

『世界』5月号吉見義明「「強制」の史実を否定することは許されない」に"真相究明法案"がでてきたのでぐぐってみた.


衆議院 請願名「戦争被害に関する調査会設置法の早期制定に関する請願」の情報 http://www.shugiin.go.jp/itdb_seigan.nsf/html/seigan/1430147.htm


参議院 第145回国会 総務委員会 第15号 戦争被害等に関する真相究明調査会設置法(仮称)の早期制定に関する請願(第五五九号外八〇件)http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/145/0002/14508130002015c.html


戦争被害調査会法を実現する市民会議 http://www.geocities.co.jp/HeartLand-Keyaki/5481/

http://www.shugiin.go.jp/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g16401027.htm


吉川春子
従軍慰安婦問題の解決促進 http://www.haruko.gr.jp/josei/


大脇雅子

戸井田議員(id:good2nd:20070314 id:Apeman:20070322 id:opemu:20070319 参照)も"真相究明調査会設置法"には賛成できるだろう. *1



『世界』座談会関連リンク


全労連:パートなどの非正規労働者 http://www.zenroren.gr.jp/jp/kintou/index.html


全労連青年部ショキチョブログ http://syokityo.cocolog-nifty.com/

2007/05/20明治公園 まともに生活できる仕事を!人間らしく働きたい!全国青年雇用大集会2007
http://blogs.yahoo.co.jp/seinen_koyou_syukai

広島県労連パート・臨時・嘱託労組連絡会 http://www.hiroshima-cdas.or.jp/kenroren/rinzirouso/renrakukai.htm



千葉県労連 http://chibarouren.jp/




『世界』2007/5月号 http://www.iwanami.co.jp/sekai/2007/05/directory.html

目次[の一部]


急進展する六者協議

李在禎 (韓国統一部長官) 聞き手=石坂浩一(立教大学) 韓国統一部長官インタビュー -日本は日朝関係正常化で,国際的地位をより高められる


慰安婦」問題が照らし出す安倍政権の本質

吉見義明(中央大学)「強制」の史実を否定することは許されない

小森陽一 (東京大学) NHK番組改変――誰が圧力をかけたのか「控訴審判決」を読み解く

西村卓也(北海道新聞) 米国に広がる「慰安婦」決議案の波紋

横田 一(ジャーナリスト) 安倍総理の「原点回帰」-「慰安婦」の強制性をめぐって

倉橋綾子(作家) 私たちをつかんで離さない「過去」-『蓋山西とその姉妹たち』から見えてくるもの


座談会 司会=木下武男 (昭和女子大学),河添 誠(首都圏青年ユニオン),菅野 存(東京東部労組),池田一慶(ガテン系連帯blog),三坂未来(NPO法人「POSSE」) 今なぜ「若者労働運動」なのか *3


対談 多和田葉子x徐京植 ソウル-ベルリン玉突き書簡(2)名前


対談 澤地久枝x佐高信 世代を超えて語り継ぎたい戦争文学-作家と作品(4)鶴彬


ほか



岡本 厚/編集後記 (2007年5月号)


従軍慰安婦」(日本軍性奴隷制)をめぐる安倍首相発言が,国際的な波紋を広げている. 「慰安婦」徴集に「官憲による暴力的拉致」はなかった,「狭義の強制性」はなかったというのがその趣旨だが,こうした論の運び自体,欧米諸国の人々には,すぐさま「ホロコースト否定論」の論法と二重写しになるに違いない.


問題を極めて狭い,具体的事象に限定した上で,証拠がない,曖昧だ,被害者(証人)は嘘つきだ,それほど被害者の数が多かったはずはないなどと言い募り,歴史的真実を否定し,歪曲し,自らの罪や責任を軽くしようとする.


こういう人々を,フランスの歴史学者は「記憶の暗殺者」と呼んだ.


日本でいえば,南京大虐殺否定論や南京戦「百人切り」否定論がその典型である. 現在,岩波書店大江健三郎氏が名誉毀損に問われている,沖縄戦時,慶良間列島における住民「集団自決」への軍命令否定論もその一つに数えられよう. 原告は米軍上陸直後に,住民への「隊長命令」が具体的にあったかなかったかに問題を限定し,まさに「強制性」を否定して,住民自らの意思による「清い死」であったかのように歴史を書き換えようとしている. しかし,元々日本軍は「軍官民共生共死」方針を打ち出し,住民に米軍への恐怖心を煽って捕虜になる道を封じ,あらかじめ手榴弾も多数配っていた.


慰安婦」たちが,本人たちの意思に反して集められ,軍によって移送され,軍が設置し管理した慰安所に閉じ込められ,軍人との性行為を強制されたことは,否定しがたい事実である (本号吉見氏).


93年の河野官房長官談話には,すでに「慰安婦の募集については,軍の要請を受けた業者が主としてこれに当たったが,その場合も,甘言,強圧による等,本人たちの意思に反して集められた事例が数多くあり,更に,官憲等が直接これに加担したこともあった」とある. 首相が分けて見せた広義,狭義いずれの強制性もここに含まれている. 河野談話継承を表明した安倍首相は,その内容に反することを平気で述べたのだ. 「知的な誠実さ」が疑われても仕方ない.


小泉政権時代,靖国神社参拝と遊就館展示問題で,国際社会から疑惑の目で見られ始めた日本政府の歴史認識は,安倍首相の「慰安婦」発言でいよいよ本格的に問われることになった.


狭義の強制性を否定することで,「慰安婦」は軍と関係なく,自発的な,あるいは「商売」として行なわれたと解釈したいという安倍氏の考えは,すでに10年も前からのものであり (本号横田氏),氏が権力内部に地歩を固めていくに従い,NHK番組に介入するだけの力をもち (本号小森氏),大手を振って歩き始めた.


しかしこうした安倍首相らの歴史認識が国際的に受け入れられることは絶対にない. それは,端的にいえば,第二次世界大戦の結果を受け入れないということであり,国連(連合国)を中心にした国際秩序の基盤を否定するに等しいからだ.


現在の安倍政権を形づくっている人々の思想は戦後否定・戦前回帰,本来の「保守」とは異なる,「極右」というべきである. その政権が目指す「改憲」は,「修正」や「改正」ではない,戦前回帰の方向以外にありえない (本号特集).


安倍首相は,首相就任以前の言説をほとんど撤回せざるをえないだろう. 撤回しなければ,日本は孤絶する. そんな無責任で粗雑な言説を垂れ流し続けた言論界,それを許した国民の責任も大きい.


日本の前途と歴史教育を考える議員の会」若手議員が安倍訪米直後に米国会でロビー活動する由, *4文部科学省地下1階で民間に委託している買春施設だ≫ってな説明でもするのだろうか *5




=関連図書=

吉川春子『従軍慰安婦 新資料による国会論戦』(あゆみ出版 1997/11/01 isbn:4751922106 )

生田武志『<野宿者襲撃>論』(人文書院 2005/12/10 isbn:4409240730 )



 

*1:なおN,M両氏の南京軍事法廷裁判資料は旧厚生省経由で遺族に渡されているので国会図書館に請求するのは筋違い

*2:休憩時間にTVで『カイジョウジエイカン』CFを見たが,似たような感覚じゃ

*3:リンクをたどると日立派遣ユニオンなんてのまで-日立Mコンの時代には想像もできない-できている=2007/02/16結成 他に雨宮処凛『生きさせろ! 難民化する若者たち』(太田出版 2007/03/28 isbn:9784778310479)ではフリーター全般労組 http://a.sanpal.co.jp/paff/union/ を紹介している

*4:日経新聞2007/04/05 http://www.nikkei.co.jp/news/seiji/20070405AT3S0400U04042007.html

*5:文房具店,書店,食堂,喫茶店文部科学省の地下1階にあっても不思議はないが,買春施設や風俗店を文部科学省が委託していては自称"愛国者"諸君の好きな「純潔」教育上もまずいだろう