軍事史専門家は漫画の歴史を御存じない?, フハッ … …

[… snip …] 戦後で何度目かの昭和史ブームが来ているという. [*1] 本屋をのぞくとベストセラーになった半藤一利, 保坂正康両氏の著書と並んで全二十四巻の『昭和ニッポン』と題した DVDブック(講談社)までが積んである. 本宮氏が業界ではおそらく初めてと思われる [*2], マンガ昭和史を描こうと思いたっても不思議はない. [… snip …] [*3]

昭和とはどのような時代だったのか. 戦後50年を機に, いまあらためてその時代精神が問われている. それも権力者の視点ではなく庶民の眼で捉えたらどうなるのか. 太平洋戦争下, ラバウルでの空襲により片腕を失った筆者が, 万感の想いで描ききる. 戦争を知らない世代に贈るコミック昭和史・全8巻.

憲法見直しを云々する前に, 昭和の歩みをよく知ろう. 戦争とは何かを身に染みて実感した筆者が, 自らの生活史と重ねあわせ, 日中全面戦争に突入するまでの時代背景を描く. 満州事変, 国際連盟脱退, 二・二六事件……そして昭和12年12月13日, 日本軍は南京大虐殺事件を起こす. どこまで続くぬかるみぞ.

中国人民のねばりづよい抵抗にあい, 日中戦争は膠着状態におちいった.
撤退もままならぬ中で, 日本の軍部は太平洋に眼をむけた.
石油資源を確保するためである.
大東亜共栄圏の美名のもとに作戦が練られる.
開戦を避ける日米交渉も決裂.
昭和一六年一二月八日, 真珠湾に奇襲をかけ, ついに太平洋戦争へ突入.

南太平洋に眼をむけた日本軍の快進撃も, ミッドウェー海戦を転機に終わりをつげる.
やがて運命のガダルカナル島の戦いを迎える.
各地で全滅, 玉砕, 徹退へと追いこまれる.
しかし, 国内では軍部への翼賛体制ができあがり, 「ほしがりません勝つまでは」の檄がとぶ.
「鬼畜米英撃滅」のスローガンが舞う.

日本の連合艦隊レイテ沖海戦でも敗れ, 主力艦を失う.
もはや敗色は鮮明になっているにもかかわらず, 「撃ちてしやまん」の号令で, 神風特攻隊を繰りだす.
しかも本土決戦を叫ぶ.
B29が飛来し東京, 大阪は焼け野原と化す.
そして昭和二十年四月一日, 米軍は沖縄本島に上陸.
その犠牲者は十九万人に及ぶ.

広島, 長崎に投下された原子爆弾の被害に恐れをなした日本は, ついに降伏を決定.
連合国総司令部は矢つぎばやに人権確保の改革, 財閥解体, 天皇の神格化否定などの処置をとる.
平和憲法の公布を機に復興のつち音が響く.
しかし世情は不安定なまま, 昭和電工事件, 松川事件と続き, そして朝鮮戦争の火が吹く.

講和条約が結ばれると同時に, 日本はアメリカと同盟関係に入る.
安保条約が批准される.
もはや戦後ではないといわれたが, 漫画を描く貧乏生活は終わらない.
60年安保騒乱, 東京オリンピックの開催, 東大紛争, ベトナム戦争の泥沼化など内外の激動が続く.
高度成長の陰で, 水俣病が発生し, 公害問題が深刻化する.

日本列島改造論が吹きあれ, コンクリートの街があちこちに.
そこへ石油ショックが襲い, たちまち狂乱物価と物不足が発生する.
政界ではロッキード事件, リクルート事件に象徴される汚職がはびこる.
昭和はどこへ行く.
天皇崩御の悲しみと共に自らの還暦をふり返る.

コミック昭和史 (第1巻) 関東大震災~満州事変 コミック昭和史 (第2巻) 満州事変~日中全面戦争 コミック昭和史(3)日中全面戦争~太平洋戦争開始 (講談社文庫) コミック昭和史(4)太平洋戦争前半 (講談社文庫) コミック昭和史(5)太平洋戦争後半 (講談社文庫) コミック昭和史(6)終戦から朝鮮戦争 (講談社文庫) コミック昭和史(7)講和から復興 (講談社文庫) コミック昭和史(8)高度成長以降 (講談社文庫)


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*1:引用者注記: 敗戦から60年目の8・15, 東京大空襲から60年, 廣島原爆投下から60年の 8・6, 60年目の長崎 8・9 …… 新撰組ブームや日露戦争ブーム以上の昭和史ブームで 秦郁彦先生がブレークすることを期待しよう

*2:引用者注記: 「思われる」のは自由ですが, 公に書く前に, すこしは調べたほうがよろしいのでは ??

*3:『諸君!』2005|01 vol.37(No.1) p.158

*4:解説は紀伊国屋書店Web より 転載