軍事史専門家は漫画の歴史を御存じない?, フハッ … …
- 『文藝春秋のオピニオン雑誌 諸君!』2005|01 vol.37(No.1) pp.154-164 秦郁彦 「南京」で燃え尽きた「国が燃える」本宮ひろ志と「レイプ・オブ・南京」アイリス・チャン [リード] ファルージャと南京に於ける都市型戦争に共通する困難さを二人は理解できなかったのか を 読み始める.
[… snip …] 戦後で何度目かの昭和史ブームが来ているという. [*1] 本屋をのぞくとベストセラーになった半藤一利, 保坂正康両氏の著書と並んで全二十四巻の『昭和ニッポン』と題した DVDブック(講談社)までが積んである. 本宮氏が業界ではおそらく初めてと思われる [*2], マンガ昭和史を描こうと思いたっても不思議はない. [… snip …] [*3]
昭和とはどのような時代だったのか. 戦後50年を機に, いまあらためてその時代精神が問われている. それも権力者の視点ではなく庶民の眼で捉えたらどうなるのか. 太平洋戦争下, ラバウルでの空襲により片腕を失った筆者が, 万感の想いで描ききる. 戦争を知らない世代に贈るコミック昭和史・全8巻.
憲法見直しを云々する前に, 昭和の歩みをよく知ろう. 戦争とは何かを身に染みて実感した筆者が, 自らの生活史と重ねあわせ, 日中全面戦争に突入するまでの時代背景を描く. 満州事変, 国際連盟脱退, 二・二六事件……そして昭和12年12月13日, 日本軍は南京大虐殺事件を起こす. どこまで続くぬかるみぞ.
- 第3巻 日中全面戦争〜太平洋戦争開始 http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/wshosea.cgi?W-NIPS=9940587384
中国人民のねばりづよい抵抗にあい, 日中戦争は膠着状態におちいった.
撤退もままならぬ中で, 日本の軍部は太平洋に眼をむけた.
石油資源を確保するためである.
大東亜共栄圏の美名のもとに作戦が練られる.
開戦を避ける日米交渉も決裂.
昭和一六年一二月八日, 真珠湾に奇襲をかけ, ついに太平洋戦争へ突入.
南太平洋に眼をむけた日本軍の快進撃も, ミッドウェー海戦を転機に終わりをつげる.
やがて運命のガダルカナル島の戦いを迎える.
各地で全滅, 玉砕, 徹退へと追いこまれる.
しかし, 国内では軍部への翼賛体制ができあがり, 「ほしがりません勝つまでは」の檄がとぶ.
「鬼畜米英撃滅」のスローガンが舞う.
日本の連合艦隊はレイテ沖海戦でも敗れ, 主力艦を失う.
もはや敗色は鮮明になっているにもかかわらず, 「撃ちてしやまん」の号令で, 神風特攻隊を繰りだす.
しかも本土決戦を叫ぶ.
B29が飛来し東京, 大阪は焼け野原と化す.
そして昭和二十年四月一日, 米軍は沖縄本島に上陸.
その犠牲者は十九万人に及ぶ.
広島, 長崎に投下された原子爆弾の被害に恐れをなした日本は, ついに降伏を決定.
連合国総司令部は矢つぎばやに人権確保の改革, 財閥解体, 天皇の神格化否定などの処置をとる.
平和憲法の公布を機に復興のつち音が響く.
しかし世情は不安定なまま, 昭和電工事件, 松川事件と続き, そして朝鮮戦争の火が吹く.
講和条約が結ばれると同時に, 日本はアメリカと同盟関係に入る.
安保条約が批准される.
もはや戦後ではないといわれたが, 漫画を描く貧乏生活は終わらない.
60年安保騒乱, 東京オリンピックの開催, 東大紛争, ベトナム戦争の泥沼化など内外の激動が続く.
高度成長の陰で, 水俣病が発生し, 公害問題が深刻化する.
日本列島改造論が吹きあれ, コンクリートの街があちこちに.
そこへ石油ショックが襲い, たちまち狂乱物価と物不足が発生する.
政界ではロッキード事件, リクルート事件に象徴される汚職がはびこる.
昭和はどこへ行く.
天皇崩御の悲しみと共に自らの還暦をふり返る.
- 関連 : 梶ピエールの備忘録 id:kaikaji:20041207 [中国]秦郁彦, 本宮マンガを語る