[転載] 山本弘先生からのおてまみ

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九郎政宗

下記のメール、転載していただいてもかまいません。


メールをいただき、ひさしぶりにグース氏のサイトを見て笑ってしまいました。

「山本先生の挑戦状」って何ですかあ?(笑)

http://www.geocities.jp/nankin1937jp/page031.html

あの文章をどう読めば「挑戦状」と解釈できるんでしょうか?こっちは議論するつもりなんかまったくないって断言してるのに。

どんな文章でも自分に都合よく解釈できる人なんだなあと、あらためて感心…… いや、あきれてしまいました。いやまったく、まともに相手しなくて正解。

本宮ひろ志事件」ですが、僕はその作品を読んでおらず、新聞報道(ちなみに我が家は産経新聞です)を読んで、「百人斬り事件を事実であるかのように書いちゃったのか」と勘違いしておりました。「百人斬りを想起させる描写」だったんですね。

作者自身、「一本の刀でどうやって百人斬れる」とツッコんでるんだから、百人斬り報道は事実ではないと認識しているのは明らか。抗議している人たちは、「報道された百人斬り」と「現実にあった捕虜の斬殺」を故意に混同しようとしている気がします。

さらにグース氏の文章を読んでいたら、こんなのも、

http://www.geocities.jp/nankin1937jp/page049.html

次に有名なのは『「南京事件」日本人48人の証言』小学館文庫です。これは全員実名で登場しています。当時南京にいた報道関係者の証言も掲載されています。インタビュー形式で、質問の内容と回答が併記されており(当たり前ですが)、学術的な価値は高いと言えます。

人間の記憶というのはあてにならないもので、戦後何十年も経ってからのインタビューが「学術的な価値は高い」とは言い難いと思うのですが、それはともかく、

この『「南京事件」日本人48人の証言』の中にも、ちゃんと虐殺の目撃証言は出てくるんですよ。27・51・119〜121・194・276ページに。あと、直接の目撃ではなく伝聞なら、54・98・112・282〜283ページにあります。

中には捕虜を数人ずつ並べて銃剣で突いたとか、刀で首を斬ったという話も出てきます。ですから本宮氏の「百人斬りを想起させる描写」は、まったくのウソとは言えません。「競争」があったかどうかはともかく、似たようなことは確かにあったと、グース氏自身が「学術的な価値は高い」と書いた本に出てくるんですから。

それと、民間人が兵士と間違われて連行されたという話も、(伝聞ではありますが)261ページの重村実大尉の証言に出てくるんです。

「(前略)中には指摘された者の家族が、うちの人は兵隊ではない、ということもあったようです。また、新聞記者から聞いた話ですが、新聞社で使っていた中国人が連れて行かれたので、憲兵隊にそのことを言って、危うく助けてもらったということです。いいかげんに連れていったことがあったようです。

あったんじゃんか!

やっぱり隠してるじゃんか、あんた!

重村氏の証言にはさらに続きがありまして、

まだ上海にいた時のことですが、一度こういうことがありました。陸軍の兵隊が支那人をつかまえてきましたので、どうするんだときくと、怪しかったらやりますと答えてました。どうして怪しいのがわかるのか、と聞くと、面構えでわかると言ってました。

面構えで判断してたんかよ〜!

生まれついて顔つきの悪い人は、それだけで殺されちゃってたんですな。かわいそうに。

もっとも本宮氏にも落ち度はあります。出所の怪しい写真や資料を元にマンガを描いちゃったのは軽率で、その点は非難されてもしかたないでしょうね。

(もっとも、それを言い出したら、小林よしのりのマンガはどうなるんだって思いますが(笑)。大井満『仕組まれた“南京大虐殺”』なんていうデタラメだらけの本を元に『戦争論』を書いてたりしますから)。

ちなみに『神は沈黙せず』の場合、角川書店から、文中で使用した全資料の提出を求められました。実際に資料にそんなことが書いてあるかを、逐一チェックされたんです。その際、一部に人名などの誤記があったのが発見され、訂正しましたが、それ以外は問題ありませんでした。

微妙な問題だけに、それだけの配慮が必要なんでしょう。集英社にはそうしたガードの甘さがあって、そこにつけこまれたんだと思います。

ヴライク・イオネスク(これが正しい表記です)の『ノストラダムス・メッセージ』については、『トンデモノストラダムス本の世界』(洋泉社宝島社文庫)で取り上げました。オカルト本の訳者は、単にお仕事でやってるだけの人も多いんですが、竹本氏の場合、どっぷりイオネスクに心酔しているのが印象的でした。

だから『再審「南京大虐殺」』を読んだ時も、「あるトンデモ説にハマる人は、別のトンデモ説にもハマりやすいんだなあ」とあきれてしまいました。本の内容も、東中野教授の本の二番煎じで、ぜんぜん新味ありませんでしたし。


山本 弘 【id:claw:20041028 より転載】
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