原水爆禁止ニュース[*3] No.61(1958/7/1) 3面

核武装阻止の平和行進・200キロを踏破

沿道各地の運動を盛り上げながら 岡山県から2名参加・東京まで


6月20日世界最初の原爆投下地 広島市を出発した「核武装阻止と民主主義を守る」一千キロ平和行進は沿道各地で盛大な歓迎と支援を受けながら一路東京に向って進んでいる 出発してからちょうど1週間目の27日には150キロを踏破して岡山県玉島市に到着 29日には岡山市に入り 同市の戦災記念平和祭に参加のため来岡していた安井理事長・平野義太郎代表委員らを先頭に200名の行進となって市内をねりあるいた


平和行進は核武装阻止と民主主義擁護を宣伝し大衆行動を盛り上げて行くうえでまた各地の核武装宣言・決議を推進し 第4回世界大会の準備活動を具体的組織するうえできわめて大きな成果をあげながら進んでいる 連日度を超える炎天下 一千キロの道程をただ原水爆禁止一すじに訴えながら歩く平和行進のその厳粛な壮挙そのものが人びとを感動させふるいたたせずにはおかぬのであろう

道端で合掌する人も 各地で盛大な歓迎

【平和行進同行記】広島市を出発した西本あつし氏と東京からかけつけ広島県竹原市で合流した竜武一郎氏(抵抗者インター[*1])の一千キロ平和行進の一行は29日 岡山県に入り笠岡市に到着した ここから岡山県代表として増本紫雲女史(59)と先に抗議船乗組に名のりを上げた藤田日是(日本山妙法寺)の2名が参加し東京まで歩きつづける一行は4名[*2]になった 27日午前7時 平和行進は笠岡市役所前を出発 市助役はじめ市労協・婦人会・青年団それに一般市民約300名が盛大に見送る中を玉島市原水協から出迎えに出た宣伝カーを先頭に同市から玉島市まで同行する156名とともに行進は次の目的地玉島市にむかって元気一杯に進んだ


中国地方の夏の太陽は9時をすぎる頃からもうじっとしていても堪らない程にはげしく照りつける この日射しを浴びて行進は進んだ [岡山県]笠岡から加わった一行はその半数以上が女性 その中には和服に下駄ばきのかなり年輩の婦人たちの姿も見られる どう見ても何々行進といった勇しいかっこうのものではない しかしこの人達が炎天下の5里[20km]の道を歩いたのだ 手にプラカードやのぼりをもち 滝のように流れる汗もぬぐわずもくもくと歩き続けるこの行進は たしかにデモや勿論ハイキングとはまったく違った真剣な雰囲気につつまれていた それは一つの信念の行進であり厳粛な行進であった

核武装への決意固く 玉島市・全市あげて平和行進

笠岡-金光-麿船-玉島の道中沿道の歓迎・接待は大変なものであった 部落 部落では沢山の人たちが沿道で出迎えた「御苦労さん 御苦労さん」と水やジュースをさげて慰らう人たち その中に一人の老婆が行進によりそいながら「大変だったでしょう 頑張って下さい」と歩く人びとの汗をふいてやっている姿が行進する人たちを感激させた 田植の手を休めて一生懸命手拭をふるお百姓さんたち また道端で合掌する年輩の人や帽子をぬぎ頭を下げて行進を迎える人たち 行進は文字通り平和への願いに人々の心をむすびつけ ふるいたたせながら進んだ


一人の老婆がそのお孫さんたちである二人の小さい子供に行進を指さしながら「ようく見ておけよ あの人たちは一番つらい一番だいじなことをやっているんだぞ ようく見ておけよ」とくりかえしくりかえし言っている言葉が胸に深く響いてくる


玉島市にさしかかる麿船で玉島市の各団体から出迎えに出ていた一団の人々が行進に加わっていた 行進が玉島市に近づくにしたがってプラカードや旗・のぼりをかかげた人が加わって行進はふくれて行った 玉島市議会からも議員13名が迎えに出て合流 市内にさしかかるころにはすでに100名を突破するまでになった


市中には歓迎の横幕が張りめぐらされ道路の両わきは歓迎の人垣でうめられた 沿道の小学校も授業を一時中止して歓迎 市中は平和行進で湧きたった この中を市中行進に入るや行進はどんどんふくれ上がり最終点の市役所広場に到着する頃には300名ほどがあとについていた 市役所では3階建ての庁舎から五色のテープが投げられ市助役・市会議長に迎えられた


行進は市役所広場できせずして平和の市民大会となり核非武装と民主主義擁護をめざして運動をさらに推し進め世界大会を成功させるために全力を上げて努力することを宣言した


この日の玉島市はメーデー以来の湧きかただといわれ「大人も子供も 男も女も 一時間でも一歩でも」のスローガンをそのまま実現したものであった


[写真]沿道の歓迎を受けて進む行進


[写真]横幕[道路上に張られた「原水爆禁止 核武装阻止 1000キロ 平和行進」の横断幕]をくぐって玉島市に入る


[写真]岡山県から東京にむかって歩いている4名の代表 右から西本,藤田,増本,竜の4氏


[写真]平和行進をむかえて開かれた岡山市戦災記念平和祭


[地図]7月11日[大阪]までの分(広島から岡山までの黒線はすでに行進した)


[四角枠の中に]平和行進の出発予定日


7月1日 赤磐郡瀬戸市 出発


7月2日【岡山県和気郡三石町 出発


7月3日【兵庫県赤穂市 出発


7月4日 竜野市 出発


7月5日 姫路市 出発


7月6日 加古川市 出発


7月7日 明石市 出発


7月8日 神戸市 出発


7月9日 西宮市 出発


7月10日【大阪府大阪市 出発


7月11日 高槻市 出発

*1:「第4回原水禁世界大会議事速報第1日目」掲載の「一千キロ平和行進・西本氏あいさつ」id:dempax:19580812 では「抗戦インター」とある 戦争抵抗者インター WRI

*2:広島市出発時点で東京を目指していた倉知和明(国鉄横浜支部)氏の名がない 事情は不明 前註「1000キロ平和行進・西本あつし氏あいさつ」で東京まであるきとおした13人[西本あつし氏を除く]に藤田日是氏の名はない