一部には「所得税を納められない二,三の漁民が仲間をかり集めたのだ」という見方をするものもあるが, 根本は被害補償を適用する法律そのものに欠陥があるためらしい



現行の法律によると,林道,用排水施設,農業用道路に与えた被害は特別損失補償法で,交通事故,飛行機の墜落など米軍から直接受けた被害は行政協定18条を適用されるが,豊海町のように,爆発音で屋根瓦が飛んだり,鶏が卵を産まなくなったり,病人の症状が悪化したりする間接的被害は補償の対象にならない. ただし対象がどうであろうと演習による被害であることがはっきり立証されれば見舞金は受けられることになっている


先ごろ豊海町役場では住民の要求に応じて屋根瓦や戸障子など演習による家屋の損傷状況を調査したところ町内で14873坪が[まま]痛めつけられていることがわかった



しかし被害の算定基準が難しいため見舞金は結局お流れになっている. このため同町が受けた陸上被害補償は去る6月完成した豊海小,中学校の防音装置と片貝-南白亀,東金-豊海,白里-大網,片貝-東金,豊海町真亀地区の道路補償(本年度分を含めて約1億円)だけである


海上補償の方も昨年から安全水域が縮小されたため補償金は大幅に削られることになり,漁民の要求額と調達庁案には5千万円の開きが出ている. このような経済的不満に加えて発射音が日常生活に及ぼす有形無形の被害が今度の陳情になったとみられる



漁民たちが免税を要求しているのは県民税・固定資産税で,豊海町の本年度算定額は固定資産税554.3万円, 町民税211万円, 県民税11.4万円, 真亀地区は1割に当たる


山野県総務部長は漁民の要求に対して「国と折衝して善処する」と答えたが,免税にせよ,税の軽減にせよ,これを政府が認めるには被害程度が物的に立証されなければならないので漁民の要求通り実現するのは難しいとされている