晩酌療法は効くか


眠剤は効くが恐ろしい. 酒ならばうまいし安眠をもたらしてくれる. 私の不眠退治は晩酌療法だ,などと自慢する人がある. アルコールの麻酔作用は否定することが出来ない. しかしそれを不眠の療法に用いるのは感心しない. 酒は最も習慣性の強いものである. 量を増さねば効かなくなってくる. それをあまり連続することは中毒の危険を持つ.


酒が思はず不眠を消してくれるのはいい. しかし長く不眠に悩み神経過敏になる人には異常性格者が多い. 酒が恐ろしいのではない. さういふ人が不眠をきつかけにして酒と結ぶことを恐れなければならない. だから正常な性格で体質も過敏性でない人が酒を飲んでもそれほど障碍は大きくないのだ. さういふ人が時に眠剤ではなく少量の酒を飲んで眠ることは決して悪いとは云えない. 常習不眠者が常習飲酒家になるのは避けねばならぬ