『赤旗[せっき]』No.53(1931/9/15)

[白石書店復刻版 II-p.47]

党婦人部の独自的組織活動の領域に就て

(無署名)



我々は『赤旗』48号に於て[*1]いよいよ加重する殺人的搾取の前に, 遂に凡ゆる伝統の鉄鎖を踏み切つて断乎として闘争に起ち上つて来つつある広汎なる勤労婦人(工場労働婦人,農村貧困婦人,都市一般勤労婦人,小市民婦人)大衆を闘争に動員し, 党,共青,全協,全農及び革命的反対派に組織して, 来るべき世界的決定的闘争に於ける日本プロレタリア婦人の輝ける且つ重要なる任務に完全に準備せんが為に我が党及び革命的大衆組織(先づ共青,全協,全農等)の凡ゆる指導機関は国際共産党,国際赤色労働組合の権威ある決定に従つて直に『婦人部』を設置すべきことを強調し, 且つそれの間違ひなき実行を要求した


それから以降, 今日までの期間に於て組織部と婦人部の同志の間に『党婦人部の独自的組織活動の領域に就て』若干の討論が行はれた. 討論の根本的問題に就ては国際共産党第5回大会テーゼは『特殊的機関(筆者註:婦人部)の創設が有する目的は, 勤労婦人間の党の働きを出来るだけ統一的に計画的にそして力強く整え, 絶えず組織をしてこの方向に課せられた, その責務に注意させる事にある』と極力強調している. 同じく国際共産党中央組織局による1925年の婦人活動に関する決議に於ても勤労大衆の間に於ける共産主義活動が(党婦人部が)党全体の任務である事, 同時に是等の婦人部或は婦人オルガナイザーは党全体の委任を受け, 勤労婦人間の活動に関しては党全体の前に責任を持つ, と規定している


尚, 婦人部の組織活動の領域に就いて同志モイローヴは『大衆的婦人活動の問題』の中で正しくも明白に述べている. 少し長いが引用する


『…婦人部は組織問題を婦人部以外に党が解決して呉れるのを待ってをり, この為に第一に苦しむのは, 婦人労働者が多数を占めている工場に於ける一般的党活動及び一般的労働組合活動である. それ故この大なる欠点は除去されなければならぬ事は分かり切った事である. 婦人部は最も広汎に一般的なる党活動及び労働組合活動に入り込まねばならぬし, 又大衆の中に於ける共産党の一般的活動にとつての有力なる党機関とならねばならぬ


婦人大衆と結び付いた独自の形態を有する婦人部は婦人労働を主要なものとする工場に於ける一般的党細胞の組織に向つて道を開くべきである. 之等の工場に於て最初の婦人労働者の活動を求め得べき婦人部は, 労働組合反対派, 或は赤色労働組合細胞の組織原則をとらねばならぬ. これは可能であるばかりでなく, 工場に於ける党及び赤色労働組合の組織の強化の為には必要欠くべからざるものである.…』と


からして, 婦人部は真実に勤労婦人大衆のオルガナイザーとしての組織活動をその政治的解釈による活動ばかりでなく, 農村に於ける, 直接企業に於ける具体的手段に依つて, 遂行されなければならないのだ. 国際共産党の婦人活動に関する諸決議に従えば, 婦人部の政治的組織的活動は次の如くにあらねばならない


【1】 勤労婦人の共産主義活動に就て, 党全体の委任を受けて,中央部に婦人部責任者が設置される. この責任者の活動を援助する為に数名から成る特別の委員会が設置され, これは委員会の凡べての具体的活動にたづさはる. 各地方, 各地区委員会の婦人部も亦かくの如くに構成される


【2】 中央,地方,地区細胞に於ける婦人部の全活動は常に党指導機関の指令の下に行はれる. 特に婦人部が行ふ組織的活動に就ては常に組織部との完全・密接なる協定の下に遂行される


【3】 婦人間の全活動に就ての成果を婦人部は党中央指導部へ定期的に報告し, 又, 中央及び地方・地区委員会の議事日程に婦人問題が常に定期的に上されねばならぬ


婦人部の組織活動の成果は凡て党組織部へ渡されねばならぬ


【4】 党の中央部及び各地方委員会の婦人部は或る一定の活動(例へば婦人デーのカムパの時, 婦人労働代表者会議の招集に就てとか)に対して, その直接下層指導機関の婦人部を指導し, 援助せねばならぬと同時に, 未だ地方委員会の確立を見ない地方へは中央部或は近接地方委員会の婦人部がその未確立地方の労働婦人間の活動()に就いて特別の婦人オルグを専定し派遣せねばならぬ. 中央婦人部は常にかかる場合に充分留意しつつ未組織・未活動方面に於ける近接地方委員会婦人部を指導せねばならぬ. 婦人オルグは凡て婦人部員であると同時に党組織部員或はその指導下に働いている組織員でなければならぬ


【5】尚, 中央及び地方委員会婦人部は, 一定の工場に於ける(婦人労働を主要なものとする主要企業, 特に未組織工場の)労働婦人の組織に対しては党のその地方, その地区の組織部との協定の下に婦人部は独自的に専属の婦人オルグを配置して労働婦人の組織に対して, 中央及び地方婦人部自ら責任を以て当り, 模範的活動となる樣に, 進んで党全体の活動の強化の為に積極的に活動せねばならぬ. これ等の活動の成果は当然党の組織部へ十中八九されねばならない. かかる婦人部による積極的活動は当面の緊急任務である所の『婦人闘士の養成』てふ問題を急速に好転させるであらう


【6】 中央及び地方・地区の委員会はその各々の婦人オルグが経験を交換し, 又この活動を党によつて統制し指導する為に党の中央及び地方・地区の各委員会は婦人オルグを招集して全国,地方,地区,小地区の規模に於て小委員会(組織会議・婦人オルグ会議)を定期的に招集する. 又中央, 地方, 地区の婦人部は地区, 工場の婦人オルグを招集して全国,地方,地区,小地区の規模に於て小委員会(婦人オルグ会議)を招集する


【7】 以上の如き勤労婦人間に於ける婦人部の活動の方針問題は全ての党の指導機関で決定される. そして婦人間の仕事に就ては下級機関から上級機関までの凡ゆる関係に於て(AP,組織,農民部,共青係,労働組合部,失業等)論ぜられねばならない




討論の際に, 組織部の同志によつて提起された一つの心配『婦人部が自ら組織活動を遂行することは右翼改良主義の所謂婦人同盟への偏向の現れではないか?』と云ふこれだ. これは正に当然現はれねばならぬ正しい心配である. と云つて, 婦人部が何ら実際的な組織活動を持たない, 党の一の調査機関, 諮問機関であると云ふ事は絶対にあり得ない. 国際共産党の決議はさうは云つていない


党の婦人部が一般的党の活動範囲内にあり, 党の指導機関からの婦人部活動に対する絶えざる指導及び統制があるならば, 婦人部のこの活動は『婦人同盟』への偏向を伴はないのみか, 婦人部は党に対して大なる助力をなし遂げる事が出来るのである


だが我々は婦人活動に就ての凡ての権威ある文書によつて指摘されているこの偏向『婦人部の組織活動と婦人同盟への偏向』に就て□かの混乱も, それへの極く些細な現はれも歓迎してはならない. 我々はもう一度国際共産党第5回大会婦人テーゼの一節を引用する


『……婦人間に於ける共産主義活動が決して共産党の余業ではなく, むしろ革命的プロレタリアートの闘争及び勝利を組織し確保する為のその重要任務中の重要な, 否, 決定的な部分であることを極力強調する. 第五回世界大会は, 各国の共産党が次のレーニンの言葉を忘れぬ事をのぞむものである.


-『プロレタリア革命は幾百幾千の勤労婦人が闘争へ参加する場合にのみ勝利し得る』


と云ふことを


[『』の対応がおかしいがここで終っている]


*1:「即時婦人部を設置せよ!!(無署名)」『赤旗[せっき]』No.48(1931/08/05)【I-p.271】