下書

広津先生の突然の死で,心の中に永久に埋められることのない大きな穴が開いてしまった感じだ. 先生は二つの目を持っておられた人だ. その一つは,不正を憎む非常に厳しい目で,もう一つは松川事件の無実の家族や被告への,暖かい思いやりの目だ. 私たち弁護団松川事件対策協議会関係者に対しても,何時も謙虚な態度で暖かい言葉をかけ,励ましてくれたし,被告団にも物心両面で支援を惜しまなかった.


文学者は,私たちと別の次元に住んでいるのが普通だが,先生はそうではなかった. 松川事件の弁護では,弁護団も驚く専門的に立派な仕事をされた. 「広津特別弁護人」と呼び,中央公論に発表された労作を正式の専門書類にして,提出したほどだ. 先生の事実の見方,人間の見方は,なるほどと感心させるものがあった. 松川から始まって青梅・八海と,それぞれ全力を尽くされたが,裁判と国民を結びつける大仕事をしたかけがいのない存在だった