『國史大辭典』吉川弘文館より【勅語衍儀】id:dempax:00100301


国史大辭典』9-p.661

勅語衍義

ちょくごえんぎ


教育勅語の事実上の官権的注釈書であるが、表面では井上哲次郎の個人的著作として、明治24年(1891)刊行された。昭和17年(1942)に井上自身の解説を付した『釈明教育勅語衍義』の内に収めて復刻されている。井上が文部大臣芳川顕正の委嘱で執筆にあたり、井上毅勅語起草関係者その他の意見で修正され、天皇の内覧を経て、出版の許可を得、公刊のはこびとなった。その点で、教育勅語が出たのちに数多く公刊された一般の私的な注釈書とは異なる意義があるといってよい。本書では、勅語の背景に潜んでいた水戸学系の儒教主義をはっきりと表にあらわすとともに、共同愛国の主義を強く打ち出し、明治後期の富国強兵鼓吹の精神を強調しているが、まだ明治初年の自由主義意識の余韻をも何ほどかとどめている




参考文献


稲田正治勅語勅語成立過程の研究』




執筆


家永三郎